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翼を。31 ページ36
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一通りの仕事を終えたときには、もうすっかり街は夜にどっぷりと浸かっていた。
いつもならこんなに遅くなることはないが、今日は仕方がないだろう。店の仕事は他に任せて、ずっと試作品を作っていたのだから。
俺はちらり、と自身の持つ白い箱に目を向けた。
白い箱の中身は試行錯誤しながら完成した自分のケーキ。店にも並べてくれると言ってくれた、プロに認められたケーキだ。
「(早く、幸に会いたい)」
さっきスマホを開いたら、幸からメッセージが届いていた。その内容は今日家に行くというもので、僕は焦りながら返信した。
でも、嬉しかった。
完成したケーキを食べてもらえる。反応をこの目で見れる。感想をこの耳で聞ける。
「(完成してすぐ、幸に食べてもらえる……っ)」
早く、早くと頭は私を急かすけど、ケーキを台無しにするのも嫌で、早歩きくらいの早さで足を動かす。
そのうち視界に自分の家が映りこみ、あぁ、やっとか、なんて思いながらドアノブに手をかける。
「おかえり、兄さん」
そんな幸の声が聞こえて、ぱっと顔をあげた。
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作者名：彩崎葉 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ksmkrn12211/
作成日時：2017年4月3日 22時
