ほつれたリボン ４−�� ページ41
糞や餌で汚れたローブを着替える為に寮に寄り、早足で大広間に行った。アフタヌーンティーには遅い時間だがディナーには早すぎる。シャルルはひとりぼっちでタルトワンホールを平らげた。余った時間でスコーンやドライフルーツをいくつかラッピングした。
記憶が蘇ってからというもの、甘い物が堪らなく魅力的に見えてしまってならない。シャルルは菓子類を懐に忍ばせてうきうきと大広間を出る。ポッター御一行とすれ違ったが、彼らはシャルルに気づかなかった。それは、周囲の目に彼の雰囲気がどこか“アンリ”のそれとはかけ離れて映っていたためだった。
「……どうしてここへ？」
「やだなあ。俺が風邪をひいてるかもしれないじゃないですか」
保健室を訪れるのは初めてだ。「入りなさい」と渋々受け入れたマダム・ポンフリーの怪訝な目を受け、ドラコに嘔吐かれた甘い笑みを浮かべてマントを脱ぐ。
消毒液の代わりに魔法薬の薫りが漂っているが、清潔そうな雰囲気はマグルのそれと近く、シャルルは前世を知覚して初めて懐古の念を覚えた。同時に、まるで病人に逆戻りしたような気がして少しだけ気分も悪くなったが、ぱちぱちと暖炉が燃える音にそれだけであたたかく感じられ、シャルルは落ち着きを取り戻す。
ポンフリーはまだ警戒している様子で、「随分と元気そうですが」と尋ねる。シャルルは涼しげに笑んで「ええ。ミスタ・ロングボトムに用があるだけですから」と菓子の入った小袋を見せると、ポンフリーはいくらか警戒を緩め、奥のベッドにいる生徒に何言か話しかけたかと思うと、今度は保健室の戸を叩いたときよりも威圧的に「本当に？」と語りかける。シャルルは神妙に頷く。
全く信じてくれない彼女と長い膠着状態が続いたが、シャルルにその場を動く気がないと悟ったポンフリーはせかせかした調子で「何かあったら飛んできますからね！」とシャルルを奥のカーテンの向こうに押しやった。
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作者名：砂な | 作成日時：2023年3月25日 23時
