断頭台で待ち合わせ (ページ40)

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ほつれたリボン　４－① ページ40

その日は午後の大半が自習に充てられていた。一年生は這い摺り回るようにして課題の消化にあたっていたが、シャルルは夜型を言い訳にして好きに過ごすと決めている。彼は前世で長期課題を最後の週に終わらせるタイプの不真面目な子供だった。
　夕食前におべんちゃらのグレゴリーの銅像の裏を確認した。あまりの埃っぽさに噎せつつ、スラックスの内ポケットから金貨を三枚出した。装飾の少ない面に水性ペンで走り書きを残し、立てかけるように隠す。実験その三である。それから何食わぬ顔で廊下に戻ってくる。
　西塔に向かう途中ですれ違ったマクゴナガルは少女のように浮かれていた。ハリーのクィディッチ参加が決定したのだろう。ドラコの機嫌は誰が取ると思っているのだ、などと気にしてもいないことを挙げながら梟小屋に入った。

　天井の下にアーチ状の木が並んでおり、そこに梟が留まっている。シャルルは動物にあまり好かれない質だ。複数の鋭い視線を感じる。
　シャルルは周囲の餌台などの家具に浮遊魔法をかけて階段を作り、とん、とん、と優雅に上った。習ったばかりの呪文はとても便利だ。奇人ウルフリックはウィンガーディアム・レヴィオーサで空を翔ぼうとしたらしい。シャルルは地面に足をつけていないと気が狂いそうになるので理解し難い。ちなみに奇人の奇行の結末については不明だが、魔法薬学で見慣れた魔法生物の翅や手持ちの梟を想像してしまう場合、途中で変身術が混ざって別の生物になる可能性があるという。
　斜め読みした魔法史の参考書の記述を思い出しながら、シャルルは手頃な距離にある個体の顎を擽った。その個体はたちまち相好を崩し、周りの梟が怪訝に見守り始める。シャルルは順々に梟を撫でていき、満月色の絹を裂いたような羽根の前で止まる。
　彼女はシャルルの両親のミミズクで、名は無い。名付けによって魔法的繋がりを持ってしまうのはよくないと闇の帝王に言われたためだとルシウスに聞いた。しかしシャルルはそんな言葉に従うほどしおらしい少年ではなかったので、そう伝聞を受けた当日からこのミミズクをルナと呼んでいた。
　シャルルが時間をかけて毛づくろいの真似事をしていたら、気づけば窓の外がとっぷり暮れていた。最後にルナをぎゅっと抱きしめ、地面に降り立つ。羊皮紙の切れ端程度の簡素なメッセージカードを嘴に咥えさせるのも忘れない。彼はばさりと音を立てて夜空を滑空した。

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