第一章その5 ページ9
ーブランドー王国 迷いの森(エマside)ー
ブランドー王国の北には、大きな森がある。
通称、『迷いの森』。その名の通り、木々がたくさん生い茂っていて、道らしい道がないせいで、地元の木こりでもない限り道に迷って、通り抜けることは困難である。
だから、不用意に中に入ってはいけない。
迷いの森は隣のペンドルトン国の千年樹の森に続いていて、そこを抜けたらペンドルトンまでそう遠くはないけど…
実際にブランドーからペンドルトンに向かう場合、大きく東に曲がってして街道を通る。
だから、わざわざ迷いの森を抜けるなんて、よっぽどのあわてんぼうかあるいは何も知らない人だろうね、きっと。
そんな森の中に、もう日が暮れようとしてるのに、親衛隊と使用人たちが王子捜索の為に動き回っている。
なんで王子がここに入ったのがわかったのかって?それは簡単。
馬小屋から続くザ・ワールドの蹄(ひづめ)の跡がこの森まで続いてたからね。
最も、地面にあるたくさんの足跡の中からザ・ワールドの足跡がわかるのはリサリサ様くらいだけどね!
親衛隊のみんなはとにかく必死。そりゃそうだ。王子の身を守る役目である親衛隊の皆様がディオ様を見失うばかりか、彼が向かったのが「迷いの森」だというのだから。
もしディオ様になにかあったら…首をはねられるどころじゃないだろう。
それもあって、暗がりの中親衛隊の副隊長、タルカス様が新入り兵のチャカさんを怒鳴りつけてる。
「この愚か者が!なぜディオ様が外に出るのを止めなかった!」
「し、しかし…あのディオ様ですよ?もし引き止めて気を悪くしてしまったら…」
目が泳ぐチャカさんに、タルカス様の友人ブラフォードさんがさらに責め立てる。
「ならばせめて護衛として同行しようと思わんかったのか!貴様それでも親衛隊の1人か!」
「ひっ…!も、申し訳ありません…!」
あーあ。俯いて泣きそうに…というか既に泣いちゃってる新入りのチャカさんを責めてもしかたないのに…
可哀想だけど、こっちも同情してる場合じゃない。
もっと可哀想なのはスージーQだ。
衣服に土が跳ねて汚れるのも気に留めず走り回っている。
彼女が言うには、ディオ様の部屋に訪れた時には部屋の主の姿はそこにはなく、最初はテラスか違う部屋の方へ向かわれたのかしら?としか思っていなかったそうだ。
しかし、いつの間にか作ったのか、暖炉の奥の抜け穴に気付いた時は顔面蒼白になった…とのことだ。
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作者名:あんず | 作成日時:2019年12月8日 21時