■ 記録12 ページ14
ピウスはふらつきながらも裏口から出た。出られた。止める人がいなかったからだ。それが吉と出るのか、凶と出るのか、ピウスが知る由もなかった。知らなくてよかった。
「僕、は…………」
俯いて立ち竦むアルマ。それを冷たい目で見下ろすサエウム。
動転しているように見えて、アルマの頭の中は高速回転していた。自分の考えが間違っていないか、何度も思考する。サエウムの言葉を否定する為に。
徹底的な証拠を掻き集める。記憶にある限りを寄せ集めて。
時には過去の発言や行動から根拠を取ってつけて。
彼の言葉を否定しなければいけない。
まだ足りない、まだ足りない、まだ足りない。
まだ……!
あんなにも自分のことを酷く言われ、これでいて尚自分を正しい位置に置こうとするのだから大したものだ。
アルマは、何がいけなかったのか全く分かっていない。自分を正当化することが常のアルマには自分の悪い所など見い出せない。
「……僕は、間違ってないよ、僕が間違ったことなんてするはずが……。だって、誰も……」
煮え切らないアルマに何も言わないサエウム。
アルマの声だけが響く間もなく消えていく夕暮れ。
そして、やっと。やっと、アルマは真実を見つけた。
見つけたくなかったものを、見つけてしまった。薄々分かっていた、それを。
「……あー、そっか」
妙に気の抜けた声。
場にそぐわない声に、サエウムは確かに驚いた。
「ふーん。なんで気付かなかったのかなぁ、簡単なことなのにねぇ。……あは、確かにそうだ。君達にとってはおかしいのか。そして僕には普通。……あは、は。ごっめんねぇ、気付くのが遅くなってさ」
いつもの調子に戻ったかと思えば不気味さが増した口調。
「……つまり、僕は狂ってるんだと」
やっと気付いたのかよ。
言葉を飲み込んだサエウムは、顔を引き攣らせた。顔を上げたアルマの瞳には、何も映っていなかった。
ただ、青いだけだった。
さっきのあのドス黒い目の方がまだ増しだよ。
アルマの右手は震えていた。
先程まで、ナイフを握っていた右手だ。今では爪がくい込んでいる右手だ。
それが怒りからなのか、別の何かからなのか、アルマにも分からなかった。
修羅場もいい所。
サエウムの視界に、ピウスが移った。
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あき(プロフ) - ぬーん(´`)さん» 返信遅くなってしまい誠に申し訳ありません!とっても嬉しいです、ありがとうございます!もうそろそろ更新できそうなので頑張りますね!ピウスさん私も好きですよー。 (2020年9月26日 21時) (レス) id: f9bd0e9f58 (このIDを非表示/違反報告)
こきあ(プロフ) - ぬーん(´`)さん» 沢山のお褒めの言葉、とても嬉しいです、ありがとうございます!これからも面白い作品作りに精進して参りますので、応援の程宜しくお願い致します!あ、私もピウス君好きです! (2020年9月20日 23時) (レス) id: 2afde1be33 (このIDを非表示/違反報告)
ぬーん(´`)(プロフ) - 夜分遅くにコメント失礼します…! え、え、凄く面白いです…! 個性的なキャラや、言い回し、圧倒的な文章構成力…!! しっかり作り込まれた一次創作本当に好きです…。文章だけでピウスくん好きになりました(*´`*) (2020年9月20日 23時) (レス) id: 554c742bde (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - サワーさん» さわんぬぁぁぁ!そう言ってくれて嬉しいです!ありがとうございます!これからも頑張るのでよろしくお願い致します! (2020年9月16日 17時) (レス) id: f9bd0e9f58 (このIDを非表示/違反報告)
こきあ(プロフ) - サワーさん» 二人で一生懸命練り上げたキャラクター達なので、そう言って頂くと本当に嬉しいです!これからも、サワーさんのことを飽きさせない作品作りに努めますので、応援宜しくお願い致します! (2020年9月15日 23時) (レス) id: 2afde1be33 (このIDを非表示/違反報告)
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