■ 【日常編】 ページ1
アーウェルサ街の外れ。森の近くにあるのは、なんの変哲もないレストラン。扉には「Close」の札がかかっている。
定休日を表しているその札をまるっきり無視したのか、顔の上半分を仮面で覆った一人の男が周囲を気にした素振りを見せ、その中へと入っていった。
時は数刻前に戻る。
レストランの裏。紫の髪の青年は、薄い月が地平線に沈んでいくのをぼうっと眺めていた。淡い色に染まった空を見つめる緑の瞳はどこか悲しげでもある。
「やあやあ、ピウス君! 今日は朝から大忙しだけど、どうかしたかい? こんな時間に外へ出るなんて珍しいじゃないか」
名前を呼ばれた青年は振り返った。
相変わらず気配を消すのが上手い。
そんなことを考えながら、ピウスは返す。
「アルマさんも、珍しいのでは?こんなところまで俺を探しに。普段は全うに職務も出来ないくせに」
「それな〜、サエウムに頼まれたんだよー。ピウスがいないから探してこいってさ。全く、人使いが荒いこった!」
声をかけた方は、アルマと呼ばれた。にこにこと笑みを浮かべているが、その目には光など無い。ピウスが毒を吐くも、アルマはそれをさらりと躱し、サエウムという名前を出す。
「サエウムさんが? それなら納得ですね」
だいぶ失礼なことを言っているがアルマは気にした様子も見せない。寧ろ笑みを深めたくらいだ。
「おっ、ここにいたか、ピウス」
「……ああ、サエウムさん。申し訳ありません。少し考え事をしていまして」
アルマの背後から現れたのは、先程話に上がっていたサエウム。いつも通り薄い隈を作った彼はアルマを一瞥すると、今思い出した、とでも言うようにピウスに聞く。
「そーいえば今回の目玉商品、なんだっけか?」
「サエウムさんって変なところで抜けてますよね」
「そうかァ?」
あんた演説担当でしょ、とピウスがこぼす。もしかしてオークション内でも絶賛されている彼の弁舌は即興なのか?
「……壺ですよ、大きいやつです」
「盗品ー?」
「当たり前でしょう、闇オークションに出品されるくらいなんですから」
盗品か、と聞くアルマにピウスが答える。
ここは、闇オークションの会場。通常はレストランの皮を被り、定休日、または客が帰った夜にオークションを開催している。
ピウスが小さく息をついたのをアルマは盗み見ていた。
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あき(プロフ) - ぬーん(´`)さん» 返信遅くなってしまい誠に申し訳ありません!とっても嬉しいです、ありがとうございます!もうそろそろ更新できそうなので頑張りますね!ピウスさん私も好きですよー。 (2020年9月26日 21時) (レス) id: f9bd0e9f58 (このIDを非表示/違反報告)
こきあ(プロフ) - ぬーん(´`)さん» 沢山のお褒めの言葉、とても嬉しいです、ありがとうございます!これからも面白い作品作りに精進して参りますので、応援の程宜しくお願い致します!あ、私もピウス君好きです! (2020年9月20日 23時) (レス) id: 2afde1be33 (このIDを非表示/違反報告)
ぬーん(´`)(プロフ) - 夜分遅くにコメント失礼します…! え、え、凄く面白いです…! 個性的なキャラや、言い回し、圧倒的な文章構成力…!! しっかり作り込まれた一次創作本当に好きです…。文章だけでピウスくん好きになりました(*´`*) (2020年9月20日 23時) (レス) id: 554c742bde (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - サワーさん» さわんぬぁぁぁ!そう言ってくれて嬉しいです!ありがとうございます!これからも頑張るのでよろしくお願い致します! (2020年9月16日 17時) (レス) id: f9bd0e9f58 (このIDを非表示/違反報告)
こきあ(プロフ) - サワーさん» 二人で一生懸命練り上げたキャラクター達なので、そう言って頂くと本当に嬉しいです!これからも、サワーさんのことを飽きさせない作品作りに努めますので、応援宜しくお願い致します! (2020年9月15日 23時) (レス) id: 2afde1be33 (このIDを非表示/違反報告)
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