パパ活

35 (まふまふさいど) ページ35

(まふまふさいど)





そらるさんとぺんぺんくんでご飯に行った帰り。
それぞれ家の方向が違うのでお店の前で別れて、途中で降ってきた雨に逃れるように、早足で家まで歩いていた。




近道で帰ろうと、繁華街を通ったのが間違えだったのかもしれない。小雨が降っているとはいえ、繁華街のその人集りに目を背けたくなる。

出来るだけ、人の間をすり抜けるように歩いていた時だった。




ふと視界に映ったのは、
自分とは少し離れて逆方向からこちらに向かってくる、
若い女性と、その横で女性の肩を抱く隣の男。


１つの傘に入る彼らを見たのはほんの一瞬で、そのまま視線を逸らして横を通り過ぎようとしていたんだ。



目を逸らすほんの、1秒にも満たないくらいの瞬間だった。






「＿＿＿＿＿＿＿え、」






思わず、足を止めた。
口から溢れた声は、雨にかき消される。

そして、スローモーションのようにゆっくりと、自分の横を通り過ぎたように感じた。




通り過ぎた女性の横顔に、見覚えがあった。
＿＿＿＿＿と言うか、何度も見たことがある横顔だった。

隣に座る彼女の横顔を会う度に、見ていたから。


後ろ姿も、同じだ。
僕の家の玄関先で、何度も見送った彼女の華奢な背中。





自分の目を疑った。

でも、一つの傘の中で僕よりも年上であろう男に肩を抱かれていた彼女は。紛れもなく、






「＿＿＿＿＿＿＿A、ちゃん...？」



小さく呟いた僕の声は夜の繁華街に、雨の音で消えていった。





.

36 (まふまふさいど)→←34

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す