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小南「ただいま〜…ってあれ、レイジさんだけ?」
木崎「ああ、雨宮は警察で身元確認しに行って、そのまま行ってくるってさ」
小南「あ…そっか、病院にいたからようやく…」
木崎「林藤さん忙しいし、一人でも大丈夫って言ってたが…雨降るだろうからって迅が迎えに行った」
日が傾き、雲行きの怪しい空が見える窓へ目をやる。
小南「…ねぇ、昨日の"アレ"、風間さんの弟の事じゃないでしょ?」
木崎「………迅のあの顔は、そうだろうな」
小南「一体何を視たら、あんなビビるわけ?」
木崎「さぁな、それは…迅だけが知ってるからな」
________________…
迅「Aちゃん」
雨が振り始め、私は空を見上げる。
落ちてくる雨を眺めていると、名前を呼ばれるとともに後ろから傘がかざされる。
迅「はい、雨が降るって俺のサイドエフェクトがいうからさ」
A「……ありがとう。でもにおいすごいから、離れたほうがいいよ」
迅「雨とにおいでわかんないよ」
一通り終わった今の私は、色んなにおいが体中に染み付いてしまっているだろう。
そんな私の気遣いも、都合よく降る雨のせいにして傘を差し出す彼に、私は静かに受け取る。
A「…お母さん、見つかったの」
迅「うん」
A「職場から避難してたみたいでね、」
迅「うんうん」
A「弟と妹とよく遊びにいく公園の近くにいたんだって」
迅「そっか、見つかってよかったね」
A「………ねぇ、迅」
迅「んー?」
持ってきてくれた傘を差しながら、迅の斜め後ろを歩く。
雨音に紛れて聞こえてくる迅の相槌に、私はずっと気になっていたことを聞く。
A「お父さんって、最期どうだったの?」
迅「………、」
その言葉に、迅は足を止める。
迅「…かっこよかったよ、「お前の願いをひとつ叶えてやる」って言って、俺が欲しがってたサングラスくれたんだ」
A「…」
迅「そしたら、最上さんの身体中が白くなって、ヒビがはいって、崩れて…塵になってった」
いなくなった父の最期を、彼はそう語った。
振り返る迅は、下手くそに笑う。
迅「…俺がもし、『最上さんのサングラスがほしい』って言ってなかったら、変わったかな?」
A「……変わらない、と思う」
迅「はは、だよな」
ずっと我慢していた涙は、雨とともに落ちていった。
この涙を知っているのは、きっと君だけだから。
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氷水(プロフ) - 海百合クラゲさん» はじめまして、嬉しいコメントありがとうございます!こういうの…っていったら難しいですが…こういう感じの夢小説少なかったのと、あまり推しを書いてる方がいなかったので書き始めました(笑)気が向いたときに見てやってください〜 (2022年8月2日 22時) (レス) id: b2d8d7cb3b (このIDを非表示/違反報告)
海百合クラゲ(プロフ) - えー好き。こういうの待ってたわ。ありがたやありがたや〜。 (2022年8月2日 21時) (レス) @page23 id: a38a157b30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:氷水 | 作成日時:2022年6月27日 5時