検索窓
今日:17 hit、昨日:49 hit、合計:82,892 hit

21 ページ22

小南「ただいま〜…ってあれ、レイジさんだけ?」

木崎「ああ、雨宮は警察で身元確認しに行って、そのまま行ってくるってさ」

小南「あ…そっか、病院にいたからようやく…」

木崎「林藤さん忙しいし、一人でも大丈夫って言ってたが…雨降るだろうからって迅が迎えに行った」





日が傾き、雲行きの怪しい空が見える窓へ目をやる。





小南「…ねぇ、昨日の"アレ"、風間さんの弟の事じゃないでしょ?」

木崎「………迅のあの顔は、そうだろうな」

小南「一体何を視たら、あんなビビるわけ?」

木崎「さぁな、それは…迅だけが知ってるからな」



________________…



迅「Aちゃん」





雨が振り始め、私は空を見上げる。



落ちてくる雨を眺めていると、名前を呼ばれるとともに後ろから傘がかざされる。





迅「はい、雨が降るって俺のサイドエフェクトがいうからさ」

A「……ありがとう。でもにおいすごいから、離れたほうがいいよ」

迅「雨とにおいでわかんないよ」





一通り終わった今の私は、色んなにおいが体中に染み付いてしまっているだろう。

そんな私の気遣いも、都合よく降る雨のせいにして傘を差し出す彼に、私は静かに受け取る。





A「…お母さん、見つかったの」

迅「うん」

A「職場から避難してたみたいでね、」

迅「うんうん」

A「弟と妹とよく遊びにいく公園の近くにいたんだって」

迅「そっか、見つかってよかったね」

A「………ねぇ、迅」

迅「んー?」





持ってきてくれた傘を差しながら、迅の斜め後ろを歩く。


雨音に紛れて聞こえてくる迅の相槌に、私はずっと気になっていたことを聞く。





A「お父さんって、最期どうだったの?」

迅「………、」





その言葉に、迅は足を止める。





迅「…かっこよかったよ、「お前の願いをひとつ叶えてやる」って言って、俺が欲しがってたサングラスくれたんだ」

A「…」

迅「そしたら、最上さんの身体中が白くなって、ヒビがはいって、崩れて…塵になってった」





いなくなった父の最期を、彼はそう語った。



振り返る迅は、下手くそに笑う。





迅「…俺がもし、『最上さんのサングラスがほしい』って言ってなかったら、変わったかな?」

A「……変わらない、と思う」

迅「はは、だよな」





ずっと我慢していた涙は、雨とともに落ちていった。




この涙を知っているのは、きっと君だけだから。





22→←20



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (94 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
368人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

氷水(プロフ) - 海百合クラゲさん» はじめまして、嬉しいコメントありがとうございます!こういうの…っていったら難しいですが…こういう感じの夢小説少なかったのと、あまり推しを書いてる方がいなかったので書き始めました(笑)気が向いたときに見てやってください〜 (2022年8月2日 22時) (レス) id: b2d8d7cb3b (このIDを非表示/違反報告)
海百合クラゲ(プロフ) - えー好き。こういうの待ってたわ。ありがたやありがたや〜。 (2022年8月2日 21時) (レス) @page23 id: a38a157b30 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:氷水 | 作成日時:2022年6月27日 5時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。