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「心臓に耳を当てて」 ページ38

「ひとらんが帰ってきてくれて嬉しいわ」
「心配をかけてすまなかった。みんなは元気?」
「内ゲバしよるぐらいには」
「ほんと変わらないな…」

白い軍服に、赤い罰印のついたマスク、腰には彼の愛刀。そしてそんな軍人の胸にはライラックの花が胸章のように飾られていた。

それを見たオスマンは何も言わない。同じ軍人として、戦友として、親友として、何もいえなかった。

「なあ、ひとらんらん」
「ん?」
「もし、生まれ変われるとしたら何をしたい?」
「……そうだね。ライラックを育てたいかな」
「それなら今からでも出来るやん」
「あはは、そうだった。ごめんごめん」
「…来世こそ、共になれたらいいな」

オスマンの小さな呟きは笑って誤魔化す彼には届かない。どうか彼の恋したあの小さな魔女が、せめて幸せであってくれるよう祈ることぐらいしかオスマンには出来なかった。



.
..
...

「随分とみんな暴れてる…」

Aは魔女達の死んだという噂を聞きつけて気紛れのまま町へ下りていた。そこから香るのは戦地の香り。血と炎と、人の焦げる匂い。

「……人間もゴロゴロ死んじゃってるし…。こんな戦争に何の意味があるんだろう?馬鹿らしいなぁ」
「………し、」
「ん?」
「…………し?」
「あ、まだ生きてるんだ」

そんなところで生きた人間が、折れた刀を持ったまま倒れていて。もう何も映っていない瞳でAを見ていることが分かった。

「なになに、って君、復讐の鬼じゃん。うわあ、最後に君みたいな大物に会えるとは…町も捨てたものではないね」
「……てん、し、?」

彼の瞳は、何も映ってはいない。
否、映ってはいないはずだった。

しかし、しっかりとAの顔を見て彼は枯れた声で「天使」とそう呟いた。

「…は?」
「……綺麗な、瞳だ。…ライラックの花のようで。……俺の好きな花…」

どくん、

Aの心臓が魔女人生の中で初めて動いた気がした。軍人の男は炎の中で笑っている。

Aはそんな男の心臓が今にも止まりそうであることを理解した。

だからそっと彼の心臓に耳を当てて、

そして、彼を助ける決意をした。

彼の純粋な笑顔にこの世界の中で、
最後の魔女は絆されてしまったのだ。

Après la pluie, le beau temps(軍パロ)→←「心臓に耳を当てて」



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作品ジャンル:ラブコメ
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鳩山(プロフ) - 114514さん» コメントありがとうございます…!(そっとハンカチを差し出す)難民さんに刺さるお話があれば幸いです! (2020年7月3日 19時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
114514 - ぐはっ(吐血) (2020年7月1日 21時) (レス) id: 3a17ec7a5b (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 琥珀さん» 琥珀さんコメントありがとうございます…!難民として完結できたことを誇りに思います!今後とも活動は続けていきますのでよろしくお願い致します…! (2020年4月7日 17時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - htrnさんの素敵なお話ありがとうございました……! (2020年4月7日 7時) (レス) id: 742aa07519 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 外ピさん» コメントありがとうございます!htrnは私の最推しでして、自給自足のためにこの作品を作りました。その言葉に私は咽び泣くほど嬉しいです…!ありがとうございました!もう終わりに近づいてはおりますが、今後ともよろしくお願いします! (2020年3月29日 21時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鳩山 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年11月23日 12時

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