116 ページ26
いつものように、HRが始まる時間よりもだいぶ早めに教室に入ると、案の定、緑間くんがもう着席していた。
この後の展開を予想し、思わず息を呑む。
私は入り口で小さく深呼吸をして、席に向かった。
「おはようなのだよ」
席に座ると緑間くんが挨拶をしてくる。
「……おはよう」
私は、鞄から取り出した教科書を机の中にしまいながら、挨拶を返す。
すると一息置いてから、再び緑間くんが話しかけてきた。
「今日の魚座のラッキーアイテムは、「虫のおもちゃでしょ。やめて」……」
やはりラッキーアイテムについてのことだった。私は即座に反応し、彼の話を遮るように断りを入れる。
彼なりに私に距離を近づけようとした結果が、おは朝占いのラッキーアイテムなのだろうけど……苦手が克服されかけているとはいえ、さすがに今日のアイテムは無理がある。たぶん好きだったとしても、持ち運んではいないだろう。
しかし、それでも緑間くんのことが気になり、目線を右にやると、彼は黙ったまま少し悲しそうな顔をしていた。
(うっ……)
彼の表情に思わず心を痛めてしまい、私はすぐに彼にこう言った。
「そ、そんな顔しないでよ。ラッキーアイテムでも、そうじゃなくても、虫のおもちゃは普通にイヤだから。占い好きになったとしても持たないから」
私が彼の方に体ごと向けてそういうと、彼も私の方を向いてこう返してきた。
「しかし、今日の魚座は11位とかなり運勢が悪いのだよ。ゆえに、ラッキーアイテムは持つべきなのだよ」
「いや、でも……」
……結局、私の言い分は全く彼に通じず、私はラッキーアイテムである虫のおもちゃを、緑間くんに押し付けられてしまったのだった。
『今日の3位は魚座のあなた！思わぬことが起きて何かが少し進展するかも？ラッキーアイテムは手紙！』
昨日は(というか昨日も)緑間くんからラッキーアイテムとして、虫のおもちゃを無理やり押し付けられてしまった。事前にラッキーアイテムが何か知っていたから、まだマシだったけど、いきなりまた変なのを渡されるのは流石に困るため、念のため今日のラッキーアイテムも確認する。
(手紙か……)
私が占い結果を聞いて思わずホッと息を吐くと、急に梨花が横から、私の目の前に便箋を差し出してきた。
「……何？」
「手紙！書いて！」
目をキラキラさせて私にそう頼む妹。
「はあ……」
私は仕方ない、というように呆れのため息をついて、妹にテキトーに手紙を書いてやったのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 33人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆう(プロフ) - めちゃくちゃ大好きな作品です…、嫌い者同士がいつの間にかお互いを意識し出すという私の性癖にぶっ刺さりの作品でした…。終わってしまったのが悲しいぐらい作者さんの緑間が大好きでした。素敵な作品をありがとうございました (11月9日 8時) (
レス) id: da835a1297 (このIDを非表示/違反報告)
いちご大福(プロフ) - 緑間よ、早よ告れ。そして鈍感にも程があるぞ。 (2022年6月11日 15時) (レス) @page35 id: a070048203 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぷよぷよぷよん♪ | 作成日時：2022年5月25日 11時
