【チョロ松】もう何も要らないよ【おそ松さん】

にじゅうに ページ23

鉛の様な身体をソファに横たえた。

他の人間の匂いがして、眩暈がする。


仕事で遅くなり、終電を逃してしまった。


タクシーを使えば帰れる距離だが、
それほどの気力も無く、近くにあったネカフェに入った。





外は雨が降っている。

パソコンでニュースを流していた所、
なるほど、どうも雨が強いわけで。






「明日は台風が来るでしょう。

外出の際は、十分にお気をつけください」



次の瞬間、画面が真っ暗になった。


いや、画面だけでなく、店内全ての灯りが。




ざわつく店の中で、小さな呟きが耳に入った。





「停電か…これはしばらく戻らないな………」






停電とは、文字通り電気が止まる事であって、
僕の部屋には、その電気を消耗しながら存在する者があって。




眩暈が酷くなる。


慌てて立ち上がり荷物を掴んだ。


店員が忙しく走り回る中、外へ飛び出した。



タクシーに揺られる間も、動悸が収まらない。



震える手で、やっと鍵をさす。

雨独特の篭った空気の立ち込める、真っ暗な台所へ向かった。





その途端、鼻をつく腐敗臭。


『……ぁ……兄…さ………』





思わず膝の力が抜け、その場に蹲った。


季節は夏。

湿度と温度の高い今、
電源の切れた冷凍庫の中で死体が腐るのは、
その扉を開けずとも目に見えていた。

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