ただ前へ【佐藤新】 (ページ17)

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新side

大河「新…！」

新「・・・なさい」

基「新…？」

新「俺、気づいてた。クリエの稽古が始まったあの日、Aちゃん泣いてたんだ…何でもないって言われたけど、違和感には気づいていたはずだった。それなのに、その原因がわからずそのままにしていた。あの時、俺がなにか声をかけていれば・・・！」

奏「新だけのせいじゃないよ…俺だって…一緒にいる時間が長かったのに何も気づいてあげられなかった…」

　怒りと悲しみが入り混じり、今自分がどんな感情なのかわからなくなっている。

　もうなにも考えられなくなっていた。

横原「新のせいでも、奏のせいでもない。俺たちがAに頼りすぎてた」

　横原くんの言う通りだ。

　「Aちゃん！ここのフリがわからなくて」

　『ここは左手を上げるのと同時に右足を回しながら…』

　ダンスのフリも・・・

　「A、これって上下から出るよりもセンターからの方がいいかな？」

　『その方がまとまりもあるし、ライトによってはシルエットになってかっこいいかも』

　ライブの構成も・・・

　「聞いてよ！ファンレターでね、すごい褒められたんだ！」

　『あの時のダンスはかっこよかったもん！努力の賜物だね』

　嬉しかったことも・・・

　「今日ね、“もっとしっかりとやれ”って怒られたんだ…」

　『そうだったんだね。でも、人一倍頑張ってること知ってるよ』

　相談に乗ってくれるのも・・・

　どんな時でも目の前には必ずAちゃんがいた。

影山「今日は帰ろう。それぞれ気持ちを休める時間も必要だ」

基「そうだね。次の稽古は追って連絡するようにしよう」

　影山くんの言葉で各々稽古場を出て行く。

　それからはどうやって家に帰ったのかなんて覚えていない。

　気がついたらベットの上に座っていた。

　その日から稽古が再開する日まで部屋を出ることはなかった。