百一話 ページ29
(いやそこで暗転出来たらしたかった)
Aはげんなりした。
あれから身体は全く動かず、堕姫の帯に取り込まれた。どうやらあの帯には殺傷能力がある上に人を取り込めるらしい。
視線を巡らせば同じように取り込まれた女性が大勢いた。
皆同じように意識を失っている。
しかし彼女は、戦闘面では強靭な精神とずば抜けた体力のせいで普通に意識を保っていた。
(…やばい、本気で奴に頭突かれる)
かなり不本意ではあったが、帯の支配下にある今では助けを待つしかないのだ。
ところが取り込まれてからかれこれ半刻は経ってしまっている。
Aの気持ちに焦りが滲み始めたその時、ふと束縛感が楽になった。
(…? 何が、)
帯の内側から外界の音は遮断されているから聞こえない。
状況を理解するには目で見る必要があるのだが、それで十分だった。
(――親分!)
Aの視線の先には先ほどまで無かった人影が見える。猪頭を被る人間は一人しかいない。
親分伊之助の登場である。
「他所様の食糧庫に入りやがって。汚い、汚いね」
どうやら帯には知能があるらしい。脳に直接響いてくるような声が不愉快だ。
(っあぁもう、どうにでもなれ!)
緩んだ帯の支配の隙をついてAは懐に手を突っ込んだ。
・
・
一方の伊之助は、どれほど待っても来ないAと炭治郎にしびれを切らしてここまで来ていた。
屋敷の床下にあった穴を進んだら広い空洞に出た事にまず驚き、ぐねぐねと蠢く言葉を話す帯に「何だこの蚯蚓キモッ!!」と不快感を露わにした。
だって目があるんだもん。その目の上に口があるんだもん。
「汚い、臭い、糞虫g」
ドカァン!!
刹那、地下空間を揺るがすような大きな爆発が起きた。
「!?」
伊之助と帯の目が咄嗟に爆発の起きた方へ向く。
鼻を突くような火薬の臭いに、ある一か所から煙が立ち上っていた。
「何だ!?」
煙の向こうで人影が揺れる。
薄れた煙の向こうから現れたるは、
「いってぇ…」
軽い様子で頭を掻く、寧塑寺Aであった。
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作者名:名梨 | 作成日時:2020年1月18日 18時