五十九話 ページ19
「この汽車の乗客二百人余りが俺の身体をさらに強化するための餌。そして人質」
「ッ…」
それと同時刻。
炭治郎は今回の敵、魘夢と対峙していた。
「ねぇ守り切れる?」
例の芋虫的物体の先端で、魘夢の頭部が嗤う。
緊迫した表情を浮かべる炭治郎が生唾を飲み込んだ。
「この汽車の端から端までうじゃうじゃとしている人間達全てを、俺におあずけさせられるかな?」
余裕そうなうっそりとした笑みを残し、魘夢は列車に埋もれるようにして姿を消した。
直後、
「炭治郎!!」
列車内の窓から身を乗り出すようにしたAが叫ぶ。
「なんか…何て言ったら分かんないけど気持ち悪いの出てきた!!来れるなら早く来てくれ!!」
「! 今行く!」
・
・
戻ってきた炭治郎から事情を聞いたAは大きく顔を顰めた。
「なるほどな…下手したら皆あの世行きって訳か」
「とにかく眠っている人達を守らないと…!」
その時である。
後方列車の方から小さくはあるが雄叫びが届いた。
「うぉぉおおぉぁあ!!」
親分伊之助、お目覚めの時間である。
「おい親分!向こうに戻って乗客を守れ!!この列車自体が鬼になってるんだ!!」
「おおぉお!どいつもこいつも俺が守ってやるぜ!!須らくひれ伏し!!崇め讃えよこの俺を!!」
一度は近づいてきていた雄叫びが再び離れていく。
それを聞き届けたAは、「じゃ、」と言っていたずらを目論む子供のような笑顔を炭治郎に向けた。
「―――へまするなよ?」
「ああ!」
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作者名:名梨 | 作成日時:2020年1月12日 18時