五十八話 ページ18
誰も彼も、何か大きなものを背負っているようだった。
今回の敵はそこにつけ込んだのだ。
(とんだクソ野郎じゃねぇか)
焦ったり怒ったりすると更に口が悪くなるのがAである。
「――ごめんな。今君らに構ってる暇はないんだ」
「っ…!」
少女の首に手刀を落とせば彼女は意識を飛ばす。
罪悪感が無い訳でもないが、先ほども言ったようにそれに構っている暇は無いのだ。
「炭治郎、先頭車両だ」
彼も同じように少年達を気絶させ、Aの方に駆け寄って来る。
「先頭車両に鬼がいる。ただ中か外かは分からないからお前は外から行け」
「分かった!」
「禰豆子は煉獄さん達を起こしてくれ」
「む!!」
これでも柱。指揮能力は並よりある。
出入り口から屋根に上った炭治郎を見送り、Aは駆け出した。
先頭車両に近付いていくほど鬼の気配がじわじわと肌に焼き付く。
「気持ち悪ぃんだ、よっ!!」
操縦室の扉を力任せに蹴破った。
「だっ、誰だお前は!!」
そこに居るのは人間が一人だけ。妙に顔色の悪い彼は運転手のようだ。
「ここに誰か来ましたか?」
「な、何の事だ!」
何か隠している。一目瞭然だった。
力技で吐かせてやろうとAが一歩踏み出した、次の瞬間。
ざらり
脊髄をヤスリのようなもので擦られるような不快感が身体を走った。
咄嗟に背後を振り返る。
彼女の青碧の瞳が見開かれた。
「……何でいつもこんなに気持ち悪ぃんだよふざけんなよ」
うねうねと芋虫をそのまま巨大化したような物体が、眠る乗客達の側で蠢いている。
何で芋虫。せめて蝶々みたいな綺麗なやつにしてくれよ。
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作者名:名梨 | 作成日時:2020年1月12日 18時