藍の海に沈む【BLEACH】

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井上織姫。尸魂界に来ていた旅禍の1人。黒崎一護の仲間。奇妙な能力を持つ、彼が攫ってきた女の子。

「初めまして、私は月琴Aです。基本的に貴方のお世話をするのはウルキオラだけど、何か彼に言いづらい事があったら私に言ってね」

彼女は一瞬キョトンとした後、微笑んで返す。

「えっと、初めまして。井上織姫です。よろしくお願いします」

...あぁ、この子はすごくいい子だ。例えどんな経験をしていたとしても、友人を人質に取られて、こんな所に突然連れて来られて怖いだろうにそれをおくびにも出さない。

「こちらこそよろしくお願いします。それと...ごめんなさい。貴方を逃がしたりはできないけれど、出来るだけここで快適に過ごして貰えるようにするよ」

謝るのは、私の自己満足。まだ少しだけ残っている私の良心の呵責を収める為だけの行為。罪悪感があっても私は私なりの矜恃を持って彼といるから、それ以上は何も出来ないけれど。

「っ...ありがとうございます。あの、失礼かもしれないんですけど、月琴さんは、死神なんですか...？」

「うん、そうだよ。私は惣右介さんの部下で、尸魂界を裏切った死神です」

どうしてだろうか。言葉にしたら、妙にスッキリした。私は、彼の部下で、尸魂界を裏切った死神。そして彼の恋人(オモチャ)。大丈夫、私はそれでいい。
どうしてか、彼女の方の表情が曇る。やっぱりとても優しい子なんだろう。

「...取り敢えず、着替え置いておくね。もし不便があったり、退屈だったりしたら呼んでください」

馴れ合えばきっと、その分この後が辛くなるのに、ついそう言ってしまう。きっとそんな愚かしささえ分かっていて、彼は私を彼女の元へやったのだろうな。それでいいと思ってしまう自分に苦笑しつつ、私は彼女の部屋を後にした。

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