藍の海に沈む【BLEACH】

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「おはよう、A」

「おはようございます」

朝の鍛錬の時は大抵私一人。だから人が来るなんて思っていなかったけれどちょうど良かった。私の能力は自己評価が難しいから。

「始解の調子はどうだい？」

「いいと思います。何となく把握も出来てきました」

「それは何よりだ」

風蘭の能力は幻覚を見せるもの。どうやら生物だろうが無生物だろうが私が望めば発生する。幻覚は一種の思い込みだから香り、質量、感触、温度などは全て存在する。事実、今踏みしめている花はグシャリとして甘い香りがする。

「...自分を出すのはまだ辛いですけど」

ゆらゆらと喋っていた自分の幻覚が消え、殆ど同時に他の幻覚も消える。大して驚いた様子も見せないあたりまだ技術力が足りないのだろうな。しかし藍染副隊長はふっと笑う。

「随分と精巧な幻覚だね。姿も霊圧も君のものと相違なかった」

「なら良かったです。でも、まだ副隊長を驚かせられないならまだダメですね」

「そんな事はないさ。これでも驚いたよ」

「じゃあ次はもっと驚かせられるようにします」

そう言うと藍染副隊長はまた小さく楽しそうに笑う。普段も笑顔なのだけど、あれはどうにも苦手だ。けれどこういう時の笑顔は存外好き。それは多分、彼が素を隠していないからだと思う。
ずっとこうして笑っていてくれたらもっといいのにな。
そんな感情を見出したのは自分を正当化したかったからかもしれない。でもそれは確かにある感情だった。

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