LONG FOR！ ページ10
ソファーに横たわり、ただただジッとAは壁を見つめていた。しかし、恐らくだが視界としての情報は働いてはいないのだろう。脳内で再生される虚妄が恰も現実であるかのように彼女に作用されているに違いない。
「おい」
ソファーを蹴りつけ、振動を与えてやる。
『ああ、君か。どうした』
まだ瞳は、視界は機能していない。こちらに目は向けられているのに一向に視線は来ず、透かして壁を見られているような気分になる。
黙っているとふ、と彼女は穏やかな微笑を漏らした。
『君は時々訳が分からなくなるな。いや、君“は”ではなく君“が”か。苛立つんだろう、私に』
その通りだ。その通りなのだが、こうやって言い当てられたことにさえ腹の虫がおさまらない。
『それはな、フェイタン。君にとって私というものが“異端”に他ならないからだ。安心しろ。それは私に向けるには十分すぎるほどに正常なものだよ』
そうではない。きっとそうではないのだ。
確かに触れたことの無い人種ではあった。言動も未だに意味不明だし、これからも理解などできないのだろうと思う。
『君は感情の単純な部分……どちらかと言うと欲に近いものしか知らないんだろう。それでいい。それが、いい』
じゃあ今のこの気持ちは何だ。怒りか。更に言うならば殺意か。
合ってはいるのだろう。だが、それらは名前を知りもしないこの感情の一部分でしかないのだろうと、それくらいは分かる。
「腹が立つ」
『うん』
「気に食わない」
『ああ』
「癇に障る」
『そうか』
ソファーに横たわったまま、女は目を閉じる。呼吸のために上下する肺の動きがなければ死人と見間違えるだろう。
そうか、これが気に入らないのか。
『それでいいんだ。大いに嫌え』
こいつはもう、生きようとはしていない。
死んでいないから生きている。まだ命があるからとりあえず、と云った具合に。死んだら死んだで仕方がないとでも言いたげな態度。
死ぬのを恐れていないというよりも、生きていることすら興味の範疇外に置いている。
だが死ぬなと決して自分は言わないだろう。この身すらいつ死ぬか分からないのだ。
けれども。意味なき死は避けたいし、こちらを殺そうとしてくる奴は返り討ちにする。自分とこいつの違いは、死に対する積極性だ。
もうAはどうでもいいのだ。家族を捨てた後に残るものなど、何も無いから。
「馬鹿女」
何が馬鹿なのか、分かっていない馬鹿な自分がそう吐いた。
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だいふくさん(プロフ) - 展開、夢主ちゃんの念能力の設定とても凝っていて凄いなと思いました。クロロの頭目らしい余裕ある思考や振る舞い、フェイタンの少し不器用なところがたまらんです。イチゴさんの文章がとても好きです（語彙力無くて上手く表せないのですが）。これからも応援しています (2019年1月31日 21時) (
レス) id: e941665527 (このIDを非表示/違反報告)
コンパイルエラー(プロフ) - 続きが早く読みたい！ (2019年1月21日 14時) (レス) id: 8e7827f170 (このIDを非表示/違反報告)
舞(プロフ) - 楽しみに待ってます！ (2018年10月21日 19時) (レス) id: 2f8f38bf2c (このIDを非表示/違反報告)
南雲藍琉(プロフ) - 続編、それも原作沿いとわかり、狂喜乱舞しております。主の性格も、回りとの関係性も大好きなのでとても嬉しいです。3月４月？勿論待ちますとも。イルミとクロロとの会話でニヤニヤしました。 (2018年10月7日 19時) (レス) id: 2e644448cf (このIDを非表示/違反報告)
琥珀くん(プロフ) - 復帰楽しみに待ってます。イチゴさんの作品は全部好きで読ませてもらってます。この作品も大好きです。続きが読める日を楽しみに待ってます！ (2018年10月7日 14時) (レス) id: 2f4db1a1c5 (このIDを非表示/違反報告)
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