其方、深淵。 ページ9
何度聞いても、痛みと屈辱を与えても理由はとうとう分からずじまいだった。そのうちあらゆる訓練にも慣れたらしく、仕置きは意味を成さなくなり、脱出さえされるような日々が続いた。
殺してしまうおうかと、感情的にではなく理性的に考えたこともある。だがしかし、どんな方法を使ったのか。殺しには。家族の死すら仕事の際となれば厭わないように訓練している子供たちが奴のこととなると騒ぎ立てるのだ。
イルミは「AはオレだからAが死んだらオレも死ぬ」と訳の分からぬことを言い。
ミルキは、いつもなら取り上げても取り上げてもやめない大事なお菓子やら人形やらを差し出してきて「殺さないでくれ」と嘆願し。
幼く、事情すら分かってないキルアは泣き叫んだ。あのツボねすらお手上げだったのだ、もう二度とあんなに泣かせはしないと誓ったのは記憶に新しい。
Aは。あの馬鹿娘は。実はナニカと同じくらい何処から来たのか分からないのかもしれない。
キキョウの胎から出てきたのは事実。銀髪なのも事実。だが、諦めてしまいたくなるほどにゾルディック家に馴染まない。
「Aは捕まると思うか」
「五分五分じゃろうな。だが捕まらんかった時はイルミが怖いぞ。何をしでかすか分からん」
その問題もある。子供たちの中で一番理想として育ったのに、少々……いや、かなりやりすぎる時がある。
普段は隠しているのか、溢れる激情を外に出した時の様子は一言で言うと“暴走”。そうなったら最後、手のつけようがない。
「厄介な双子だ」
「お前の子供じゃて」
そう言われて更に気が滅入った。事実なのだが、腑に落ちない。
「ま、ワシらは待つことしか出来んしの。落ち着いておれ」
「親父」
「なんじゃ」
部屋を出ていこうとしていた父が振り向く。
「親父のようになればオレも少しは好かれるか？」
「無理じゃな。何しろ、“親父殿を育てた者”として好かれとる」
なるほど。よく“じいさまは強い！”と騒いではいたがそういう意味だったのか。
「そうか」
詰まるところ、暗殺者として接しすぎてAの何も分かっていないのだ。そのツケとして今、家出をされて更には出し抜かれまでした。
情けない。何が父親。何がゾルディック家当主。
「帰ってきたら話でもしてみるか……」
意外にもこの馬鹿父ありにしてあの馬鹿娘なのかもしれぬ。
もう遅すぎたのかもしれない決心をして、しかし何を話せばいいのやら、と頭を捻った。
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だいふくさん(プロフ) - 展開、夢主ちゃんの念能力の設定とても凝っていて凄いなと思いました。クロロの頭目らしい余裕ある思考や振る舞い、フェイタンの少し不器用なところがたまらんです。イチゴさんの文章がとても好きです（語彙力無くて上手く表せないのですが）。これからも応援しています (2019年1月31日 21時) (
レス) id: e941665527 (このIDを非表示/違反報告)
コンパイルエラー(プロフ) - 続きが早く読みたい！ (2019年1月21日 14時) (レス) id: 8e7827f170 (このIDを非表示/違反報告)
舞(プロフ) - 楽しみに待ってます！ (2018年10月21日 19時) (レス) id: 2f8f38bf2c (このIDを非表示/違反報告)
南雲藍琉(プロフ) - 続編、それも原作沿いとわかり、狂喜乱舞しております。主の性格も、回りとの関係性も大好きなのでとても嬉しいです。3月４月？勿論待ちますとも。イルミとクロロとの会話でニヤニヤしました。 (2018年10月7日 19時) (レス) id: 2e644448cf (このIDを非表示/違反報告)
琥珀くん(プロフ) - 復帰楽しみに待ってます。イチゴさんの作品は全部好きで読ませてもらってます。この作品も大好きです。続きが読める日を楽しみに待ってます！ (2018年10月7日 14時) (レス) id: 2f4db1a1c5 (このIDを非表示/違反報告)
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