STORY＊56 ページ6
『お母さん、お父さん…また帰って来れないの？』
｢ごめんねA。おばあちゃん来るから寂しくないよ｣
『……うん』
｢Aは偉いな。早く帰ってくるからな｣
違うんだよお母さん。
おばあちゃんも好きだけど、お母さんに傍に居て欲しかった。寂しさで押し潰されて溺れそうだった。
偉くないよお父さん。
早く帰ってきてくれるけど、また直ぐに仕事に行っちゃうでしょ。我慢の限界だったよ。
小さい頃は1週間に2回だった1人も学年が上がる度に増えて、高校生になった去年は大晦日とお正月の2日間しか家に居なかった。
メールはくれるけど電話は無い。気にかけてはくれるけど帰っては来ない。
そんな温度の低い生活が当たり前になってたはずなのに、ゾムに出会ってから人の温かさを思い出して、それに甘えて縋りたくなったんだ。
私は強くも無ければクールでも無い。
誰かに弱い所を見せたくない強がりで自分を守ってきた結果、"クールなAさん"というレッテルが貼られ、それが独り歩きした事で私はそれにならざるを得なかった。
だけど、こんな私を受け入れてくれたのはAとB、そしてC。
それから、そんな私に甘え方を教えてくれたのも、我儘を言っても良いんだと教えてくれたのもゾムだった。
だから耐えられた。夜さえ乗り越えればまた皆に会えるから。
夜の暗闇はいつだって私を飲み込んでしまうから、電気を付けたまま寝る癖は今だって止められない。
明るい部屋なら夜も朝も関係ない。泣きたいくらい長い夜に怯えずに済む。
テレビの音を付けたままにすれば、少しは寂しさも紛れるから…こうやって乗り切ってきたのに、何でだろう。
頭元の時計は6時を少し過ぎた頃。
隣には私の手を握っまま規則正しく寝息を立てるゾム。
久しぶりに深い眠りに入る事が出来た頭は、昨日の自分の姿まで鮮明に思い出せるくらいだ。
ゾムが好きになったのは、あんな私じゃない。
子供みたいにゾムを困らせて、我儘ばっかり言って。
昨日の私はゾムが好きになった私なんかじゃない。
戻らないと。
ゾムが好きになってくれた私に。
離れたくない。失いたくない。だから、またあの私に…。
zm｢ん…Aちゃん起きたん？おはよ…｣
『おはよう。昨日はごめんね…』
zm｢何が？｣
『変なところ見せたから、幻滅されたかなって…』
zm｢する訳無いやん。嬉しかったで｣
無理だよ…。もう戻れない。
私の事を愛おしそうな瞳で見てくれるこの瞳に、どうしたって縋りたくなるんだ。
ごめんねゾム。
好きだよ。
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呉城 莉李。(プロフ) - さくさん» さく様コメントありがとうございます(*^^*)テスト期間はストレス溜まりますよね、お疲れ様です。番外編などでもう少し続いていくので、もしお暇はお時間ありましたら、お読みいただけたら幸いです(_ _*)) (2022年11月23日 10時) (
レス) id: 7f13b99d76 (このIDを非表示/違反報告)
さく - ええ話ですね。つづきがあるかもですが、ひとまずよかったです！読むはじめて損しませんでした！テスト期間でイライラすることが多かったのですが素敵な話でスッキリしました。またちょくちょくみに来ます。大好きです。 (2022年11月22日 21時) (レス) @page22 id: 7d60a27ef9 (このIDを非表示/違反報告)
呉城 莉李。(プロフ) - ひよこさん» ひよこ様コメントありがとうございます(*^^*)嬉しいお言葉ばかりで、私もひよこ様のコメントに泣きそうになりました。お時間いただきありがとうございます！もうすぐ完結なので、またお暇な時にでも覗いていただけましたら幸いです(_ _*)) (2022年10月21日 22時) (レス) id: 4f45722e46 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこ - 初コメント失礼します。今日初めて読んだのですが、泣きました。号泣しました。こんなに心に刺さったのは初めてです。本っっっ当に大好きです、更新楽しみにしています！ (2022年10月21日 21時) (レス) id: 82efcbbf1e (このIDを非表示/違反報告)
呉城 莉李。(プロフ) - ねう。さん» ねう。様コメントありがとうございます！私も自分で執筆していて完結に近付いていくのが寂しく思っていたので、そのお言葉とても嬉しいです(；；)！更新頑張りますね！ありがとうございます(*^^*) (2022年9月26日 7時) (レス) id: d747e32ce0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：呉城 莉李。 | 作成日時：2022年9月22日 12時
