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藍沢side
俺が自傷行為を何度もしたから、部屋には自身を傷つけられるような硬いものは無い。
花瓶もあったが、それもプラスチック製に変わり、
コップでさえもプラスチックに変わった。
ただただ、ボーッとする時間だけが過ぎていく。
病室の窓から、ふと見えるヘリ。
走っていく同期やフェローたち。
何も出来ない自分_____
そんな自分が情けなくて、悔しかった。
今日もただボーとするだけで時間が過ぎ、
空はとっくに日が落ち、暗くなった。
ガラッッ、とドアが開き、そっちに目をやると、
俺を殴ってきた奴らだった。
??「ふーん、本当だったんだな、入院してるなんて。……お前のせいで今仕事なくてさー、暇してんだよね。」
そういう彼の目は、冷たく、しかし不気味に微笑んでいた。
??「……俺の暇つぶしに付き合わせてやってもいいんだぞ?」
そう言いながら、ゆっくりと近づいてくる。
すると、突然痣のある脇腹を殴ってきた。
「…っ、!!」
??「……さっさと消えろ」
それだけ言って、出ていった。
それと入れ替えに、夕食を持って冴島が入ってきた。
…………恐らく、カートの音が聞こえたんだろう。
誰も来なければ、部屋を出ていくことなんてないだろう。
…………この時ばかりは、冴島に感謝した。
冴島「藍沢先生、夕食です。……さっきの方、脳外の方ですか?」
「……あぁ、…」
そう言えば、どこか不審そうに俺を見つめてから、
はぁ、と息をついた。
冴島「……少しでいいので、食べてください。……では、」
食事は食べる気がしなくて、ほとんど栄養剤で済ませていたものの、
そろそろ食べなければ拒食症にもなりかねない、と白石が無理してでも少しは食べろ、ということで、食べやすいお粥と柔らかめの野菜だった。
少し口をつけるも、なかなか箸は進まなかったが、
野菜だけは何とか全部食べ、お粥はほとんど残した。
****
就寝時間もとうに過ぎ、暗くなった病棟。
ベッドにもたれ、窓からヘリを見つめながら考える。
……『消えろ』
さっき言われた言葉だけが、頭をまわる。
……どうして、俺なんかを助けるのだろうか。
消えたいと願う、消えろと願われている人間が、
どうして救われるのか。
どうして、消えることを許さないのだろうか。
失いたくないものは、失われるのに。
失いたいものは、失えない。
…………本当に、運命というものは、残酷だ。
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yuuftykk(プロフ) - さくらもちぱんさん» ありがとうごさいます!!楽しみにしてくれているなんて、とても嬉しいです!!頑張ります!! (2019年4月4日 14時) (レス) id: a80528a29b (このIDを非表示/違反報告)
さくらもちぱん - 藍沢先生がかいた手紙とかほんとうに感動しました!毎回楽しみにしています。これからもがんばってください! (2019年4月4日 14時) (レス) id: cdc2a4987c (このIDを非表示/違反報告)
yuuftykk(プロフ) - 愛子さん» ありがとうございます!!リクエストにお答え出来ていて良かったです!こんな作者ですが、これからもよろしくお願い致します! (2019年4月4日 9時) (レス) id: a80528a29b (このIDを非表示/違反報告)
愛子(プロフ) - リクエストした話読みました。個人的には、これまでの話の中で一番です。これからもリクエストさせていただきます。 (2019年4月4日 2時) (レス) id: 0fe946f898 (このIDを非表示/違反報告)
yuuftykk(プロフ) - 実桃さん» そんなことを言って頂けて、とても嬉しいです!!毎回読んでくださってありがとうごさいます!頑張ります、!! (2019年4月4日 0時) (レス) id: a80528a29b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:自鳴琴 | 作成日時:2019年2月18日 21時