奏 (ページ24)

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24話ページ24

「よねやん先輩どうすんの？本部長は玉狛を援護しろって言ってるよ。」

「どーっすっかなあ。もうこっち来てるもんなあ。」

緑川と米屋は下を見下ろしてそう言っていた。下には人型近界民(ネイバー)がいるのだ。赤いチリチリになった髪の毛に白い角。まるで赤鬼みたいだ。

「おかしい。」

そう。おかしいのだ。この近界民(ネイバー)は何かがおかしいんだ。

「何がおかしいんだ？涼風。」

「すみません。何がおかしいのかは分かりません。出水先輩。」

出水先輩はそのおかしさを感じていないらしい。多分反応がないから緑川も米屋先輩も感じていないのだろう。

『Aちゃんの副作用(サイドエフェクト)が違和感に感じてるのかもしれないね〜。どんな風に聞こえるのかな？』

私は……自分の耳をすまして1点集中していた。憎い近界民(ネイバー)を殺さないで我慢しているだけでもキツイ。集中ができない。

集中するんだ。私。

「殺意がない。なんだろう。気持ちが足りないというか、想いが薄いというか……。まるで意思がない。」

私はそこまで言って、ハットした。

B級合同は今まで基地南部を防衛していた。ただし人型の出現によってそれを停止せざるをえなくなった。そこには新型もいる。

「敵は陽動です。こうやっているうちに今も市街地にトリオン兵を送り込んでいる。」

「だからって人型を放置しておく訳にはいかないだろ。涼風。」

「そうですけど……。」

出水先輩が言う通りだ。ここでトリオン兵に兵力を当てたら人型にやられる。人型に兵力を当てたらトリオン兵が街を壊す。

「じゃあ、私が街を防衛します。」

「Aちゃん1人で？」

「そう。本部長もA級は新型の相手って言ってたでしょ？」

私のその言葉に、沈黙が流れた。緑川は新型に1人で相手するのか？と言いたいのだろう。確かに新型はA級でも1人では無理がある。普通なら。

「行ってこい。」

「おい、弾バカ何いってんだ。」

ほんとになにいってんだ。言い出したのが自分だと言えそう思う。私1人で全部街を守りきれるとも想わない。

「涼風は、俺たちと組んで1人を殺すよりも、1人で大量の敵を相手する方が向いてる。涼風。行ってこい。」

「はい。」