19.形見 ページ20
やっと外に出られる様に成った私が、飛び出した家に、中原さんにお願いして立ち寄ると、まるで何年も経った様に酷く廃れていた。
鍵を開けて中へ入る。
使っていた物が其の儘で、一気に住んでいた時の記憶が流れ込んで来た。
「何でまた、急に帰りてェなんて…」
キョロキョロと辺りを見ながら彼は聞いた。
「どうしても、誰にも渡せないモノが有るんです」
自分の身の回りの、本やらを取りに来たけど、本命は其。
父のクローゼットの奥に、小さい頃から変わらずに目的のモノは有った。
「……両親の楽器です。中原さんにはお教えしてませんでしたよね?」
「あ、嗚呼…」
綺麗な音で、ピカピカしてて。“自分もやりたい”ってよく言ってたっけ。
ずっと前だけど、両方とも吹き方を教わり、少しなら演奏できるので、使い道が無いわけではないかな、と思ったのだ。
それに、大事な形見。
「A……」
唯涙が零れた。助けられなかった悔しさが全部溢れて止まらない。
「…今此所に居るのは、お前の他に俺だけだ。……気が済む迄泣きゃいい」
そうやって側に居てくれた事が有り難くて、終いには我を忘れて父のサックスが入ったトランクを抱き締めて、すがる様に泣いた。
然し、其の所為で私の異能を中原さんに見られていたなんて、此の時の私は全く気付かなかった。
＊＊＊
言い忘れてましたけど、Aは高校生です。
次回、彼女の異能を間近で見てしまった中也さんは…?
Kotoha
20.莫迦 side中也→←18.こういうのは side中也
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミリン - やばい！めっちゃ続き気になる〜 (2019年10月20日 19時) (
レス) id: 78bca44abf (このIDを非表示/違反報告)
kotoha - ミリンさん» 美味しいですよ〜 好みによりますが、最初はお砂糖と珈琲の量を1:1で入れて、バランスとってみて下さい！ (2019年10月1日 20時) (レス) id: bf2849b969 (このIDを非表示/違反報告)
ミリン - コーヒーの淹れ方参考にします！ (2019年10月1日 19時) (レス) id: 78bca44abf (このIDを非表示/違反報告)
ミリン - 続きが気になる〜!！ (2019年9月12日 6時) (レス) id: 78bca44abf (このIDを非表示/違反報告)
ミリン - 最新話も面白かったです！続き待ってます！ (2019年9月5日 22時) (レス) id: 78bca44abf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Kotoha | 作成日時：2019年7月31日 10時
