二百七枚目 ページ20
Aside
マスク下で口をパクパクさせ、なにも言えなくなった私の手をそっと離した黄瀬の顔は、照れたように笑っていた。
正直久しぶりに会ったことで、初めから早くなっていた鼓動が更に早くなって苦しい。
顔も熱い。
あ、とか、ぅ、とか言葉にならない声を出す私はとりあえず黒子の後ろまで逃げ帰った。
一度落ち着くために深呼吸をしたが、ほとんど意味もなく。
私はまだ落ち着かない胸を必死に抑えながら黒子の背中から顔だけ出して、黄瀬を指さし、叫んだ。
「ッはよ帰れ!!」
「ははっ、うん!じゃあまたね〜」
ひらひらっと手を振り、なんだか機嫌よく帰って行く奴を皆ぽかんとして見送っていた。
私はずれたメガネを直しまた大きくため息をつく。
息を吐ききった私に、振り返った黒子が心配の声をかけてくれた。
「…大丈夫ですか?」
「うん…。ほんと鬱陶しいなアイツ」
「そうですね」
大きな嵐は過ぎ去った。
過ぎ去ったのだが、二次災害である皆が私を見つめる好奇な視線だけは残っている。
聞きたいことあるんだけど…どうしようかな…みたいな空気がただこの場に流れていた。
そんな中、最初に口を開いたのはリコさんで。
「…黄瀬涼太との関係って、その」
「別に何でもないです。ほんとに」
強めにそういえば、もうはいそうですかしか言えないだろう。
リコさんも皆も納得はしてなかったけれど、それ以上追及はしてこなかった。…今回は。
その後練習に戻るわけだが、一人、まだなにか皆以上に納得していない人物が私をじっと見つめていた。
「…なに、黒子」
「…少し、気になったんですけど」
「うん」
「黄瀬君は、山梨さんのこの姿知っていたんですね」
「んぐッ」
確かに、これは疑問を持ってもおかしくない。
ずっと布団を被っていた私。
しかも高校から布団を被るのをやめたと言ったのに、どうして黄瀬は布団の中身を知っているんだろうって。
しかもそんな私を見つけるスピード早すぎだし…。
「…たまたまじゃない?」
「…あと、普通布団はどうしたか聞きませんか」
「まあ、アイツ馬鹿だし聞かないのもおかしくないっていうか…」
「……そうですか」
うん、当たり前だけどこれはまだまだ納得していない声。
けれど私はしれっとして、黒子から離れリコさんに海常との練習試合にいるもの等の確認をしに行った。
…対戦相手は黄瀬のいる強豪校、海常高校。
次の試合、たとえ練習試合だとしてもこのチームには勝ってほしいと思う。
ついでに黄瀬の高ーくなった鼻っ柱をへし折ってくれないかなー、なんて。
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しゅる(プロフ) - はぁぁぁ!!!テツくんも主ちゃんの応援にはニヤついちゃうよねぇぇ!!もしや主ちゃんってキセキ+αにモテる…? (4月12日 0時) (レス) @page28 id: 9269892d89 (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - しゅるさん» もしかしてキセリョの幼馴染みを見てくれていた方ですかね!? こちらの作品も見て下さりありがとうございます〜!絵も文も全く成長してないんですけど、そう言ってくれると嬉しいです…笑 ぼちぼち更新していきまーす!! (10月17日 1時) (レス) id: 3d31480182 (このIDを非表示/違反報告)
しゅる(プロフ) - こたきんぐさん!!!お久しぶりです!!今更ながら見ました!!(遅い)やっぱり最高ですね!!!そして絵がうますぎる!!いろいろニヤニヤしながら見てます!((( (10月14日 13時) (レス) @page21 id: 9269892d89 (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - 天使長さん» 嬉しいお言葉ばかり…!ありがとうございます!自分のペースになりますが頑張っていきたいと思います! (8月21日 20時) (レス) id: 3d31480182 (このIDを非表示/違反報告)
天使長(プロフ) - シリーズ1作品目から愛読してます!号泣したり、爆笑したり、とにかく文才が素晴らしいなぁと思ってます!あと絵も神レベルで尊敬しかないです!無理せず更新頑張ってください!待ってます! (8月19日 9時) (レス) @page4 id: a49e61df0e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こたきんぐ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Kotakinnhu/
作成日時:2023年8月6日 12時