百四十二枚目 ページ2
Aside
「Aちゃんは好きな人いないの?」
「え、いないけど」
「…きーちゃんは?」
「黄瀬ぇ?」
なんで黄瀬。
というか、私恋愛とかわかんないから黄瀬だからどうこうとかないよ。
「黄瀬は、友達」
「え〜」
「って、さっき黄瀬好きな人いるって言ってたじゃん」
「…そ、そうだけど」
なんだかむず痒そうに声を上ずらせるさつきちゃんに私は首を傾ける。
そもそも私に恋愛話はダメだって知ってるでしょ、とさつきちゃんに言えばむぅううと変な声を出しながら布団に抱き着いてきた。
「あっ、Aっちに桃っち!」
そんな私たちに気付いた、前を歩いていた黄瀬。
黄瀬は横にいる後輩と友人から離れ、私たちの元へ走ってくる。
気のせいか、さっきの後輩女子生徒からの視線が鋭く刺さっているような。
「二人も移動?」
「いやトイレ帰り」
「そっスか」
俺は移動で〜と話を続ける黄瀬の背後から先ほどの女子生徒がこちらへやってきているのが見えた。
とたとたと軽い可愛らしい足音をさせながら、またひょこりと黄瀬の体から顔を出す。
「こんにちは!」
黄瀬の話が終えたタイミングを見て、私たちに挨拶をしてきたその子はきゅっと黄瀬の制服の裾を握る。
「涼太先輩、この先輩たちってバスケ部のマネさんですかぁ?」
「そっスよ」
「へぇー!私も、バスケ部のマネージャー入ろうと思ってて!」
「あ、そうなんだー。よろしくね」
「はい!」
押され気味のさつきちゃんに、黙る私。
黄瀬はそっと自分の袖を握る彼女の手を離していた。
「じゃあ、俺もう行かなくちゃ」
「あーうんバイ」
「またお話しましょーねー!」
偶然か、私の声を遮るように言う一年に少し眉を顰める。
うん、決して偶然ではないね。
この空気、話し方、黄瀬がいなくなったら速攻クラスに帰っていくところを見るに私にいい思いを抱いてないことはわかる。さつきちゃんに対してどうなのかはわからないけれど。
そんなわかりやすい彼女の態度に、私とさつきちゃんを顔を見合わせて肩を上下に動かした。
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作者名:こたきんぐ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Kotakinnhu/
作成日時:2023年1月28日 0時