五十枚目 ページ4
Aside
「大丈夫っスか!?」
「キセリョ君?…なんで戻ってきたの、用事あったんでしょ」
帰ったと思っていたキセリョ君が、私の元へ戻ってきた。
なんだか目元が熱くなったのはきっと気のせいだ。
「そんなの嘘に決まってるでしょーが!……出て行くの、遅くなって、ごめん」
「…いや、ありがとう助かった」
「っ、違うんス!!俺、…おれ、山梨が押されたとこから見てたんス」
とんでもないカミングアウトである。
ということは私が乱暴されていたところを見ていたということだ。
別に責める気はない。
逆にキセリョ君は最後まで見て見ぬふりだってできたのに、最終的には助けてくれた。
なんならそんなこと最後まで言わなくてよかった、変に素直な犬である。
…待てよ、じゃああのボールを投げたのはコイツだということか?
「…ボール、投げたのってキセリョ君?」
「違う、俺がいた方向とは違うとこからだったっス。他の人っスよ、誰かわかんないけど」
「…へー」
「ほんとごめん。ほんとに、その、怪我はない?」
「…大丈夫、ただ立てないだけ」
「じゃあまだ座ってて」
いやまず立たせてくれ、という言葉を飲み込む。
だってキセリョ君ったら、落としてしまったドリンクを近くにある水道で洗ってからカゴに戻してくれていたから。
「なんか、ありがとう」
「…罪滅ぼしっス」
「なんか、今日はやけに素直だね」
「…素直で悪い?…俺ひよっちゃったんだもん」
キセリョ君はしゃがみ込み、顔を手で覆い頭を垂らした。
キセリョ君の気持ちは何となくわかるよ。
解釈違いかもしれないけどさ、きっと私をかばったら自分の立場がどうなるかってことを考えたんじゃないかな。
まだ十代前半の子供、自分の身が一番大切なのは変わりない。
いや歳なんて関係なく九割がた皆そうだろう。
それでも最終的には出てきてくれたじゃん
私は無意識に彼の頭に手を置いていた。
「A、っち?」
「っ顔上げんな」
「ぐえ」
恥ずかしくなってきた、だからと言って手をどかすタイミングもわからない。
上げようとした頭を思い切り下げ、サラサラの金髪を乱暴に撫でた。
そこに人がいること、私を助けようとしてくれた人がいたこと、私の味方になってくれる人がいるということを感じて、何かがこみあげてくる。
「…Aっちマネージャーしてたんすね」
「してた。てかその名前の後の、っちってなんなの、前も聞いたけど」
「だから気にすんなって言ってるじゃん」
気になるのになぁ、と思いながら私は震えている手で彼の髪を撫で続けた。
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こたきんぐ(プロフ) - 。さん» お返事遅くなりすみません!いいえ…完結ではありません…続きます…また近々ぼちぼちあげます(泣) ありがとうございます! (2022年11月7日 23時) (レス) id: 7882bc78cd (このIDを非表示/違反報告)
。 - 面白くてイッキ見しちゃいました!ちなみにこれは完結なんですか? (2022年10月30日 22時) (レス) @page36 id: 309377f64b (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - (名前)まいさん» ありがとうございます!ぼちぼちやってきます…!! (2021年8月28日 12時) (レス) id: 7882bc78cd (このIDを非表示/違反報告)
(名前)まい(プロフ) - 最高 (2021年8月14日 22時) (レス) id: ec16fd7069 (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - ぼた餅さん» ありがとうございます!お返事遅くなり申し訳ないです…。ほんと自分のペースになるんですが頑張らせていただきます! (2020年8月16日 17時) (レス) id: 7882bc78cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こたきんぐ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Kotakinnhu/
作成日時:2020年5月23日 20時