四十七枚目 ページ1
Aside
私が一軍へ移動して少し経った頃、私はあの不良が一軍の選手だったことを知った。
正直心配でしかなかったけれど、虹村さん、主将がアイツが問題を起こすたびにきちんと絞めてくれているので今のところ大丈夫そう。
私と会うと、必ず突っかかってくるので自然と避けている。完全に避けれてないけど。
授業、部活、ネコに餌やり。
そんないつも通りの日々を送っていた週の初め、今日は授業受けるのめんどくさいなぁと思い保健室へ向かっていると、廊下でばったり赤司君と会った。
「あれ、どこか行くのかい?」
「保健室にね」
「どこか具合でも悪いのか」
「うん、眠くて」
それは具合が悪いとはいわないよ、と上品に笑われた。
きっと赤司君はさぼったことなんて生まれてこの方なさそうだ。
なんせ赤司家次期当主、サボりなんてあのお父様が知ったら大変なことになりそうだし。
「そういえば一昨日の土曜日、君のおばあさまに会った」
「…ふぅん」
ぴくりと反射的に眉が上がる。
勿論赤司君はそんな様子の私には気づいていないだろうけれど、私は自然とぎゅっと布団の内側を強く握った。
「山梨さん、君」
「気づかれないかと思ってた。何、あの人なんか言ってたの」
「…いや、ただ僕に向かって『確かあの子と同じ学校だったね』とだけ言われただけさ。
よくわからなくてその子の名前を聞こうと思っていたけど濁された。でも、すぐにわかったよ」
「流石赤司君」
何が流石かは上手く説明できないけど、さすがである。
布団の中でボサボサの髪をくるくる指に絡ませ遊ぶ。
「一つ聞きたいんだけど」
「なに?」
「君の瞳の色は何色か、教えてほしい」
こちらに手を伸ばすわけでもなく、布団を剥がそうとするわけでもなく、赤司君はただそう私に聞いた。
色、色、何色だったっけ、なーんて。まともに自分の顔を鏡で見ない生活を長く過ごしてきた。
そうだな、確か、私はお母さんと同じ
「おれん、じ」
「…!…そうか、ありがとう」
茶色より明るい、オレンジ色の目をしていたはず。
まだ私は自分の姿をみる勇気はないし人に見せる勇気なんてもってのほか。
確かめることはできないけど、核心はあった。
亡くなった母の目の色ははっきりと覚えてるから。
「何でそんなこと聞くわけ」
「…それはまた今度、ゆっくり話そう山梨」
授業に遅れるといけないからと、赤司は私の横を通り過ぎて行ってしまった。
私は釈然としない気持ちのまま、保健室へまた足を進めた。
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こたきんぐ(プロフ) - 。さん» お返事遅くなりすみません!いいえ…完結ではありません…続きます…また近々ぼちぼちあげます(泣) ありがとうございます! (2022年11月7日 23時) (レス) id: 7882bc78cd (このIDを非表示/違反報告)
。 - 面白くてイッキ見しちゃいました!ちなみにこれは完結なんですか? (2022年10月30日 22時) (レス) @page36 id: 309377f64b (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - (名前)まいさん» ありがとうございます!ぼちぼちやってきます…!! (2021年8月28日 12時) (レス) id: 7882bc78cd (このIDを非表示/違反報告)
(名前)まい(プロフ) - 最高 (2021年8月14日 22時) (レス) id: ec16fd7069 (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - ぼた餅さん» ありがとうございます!お返事遅くなり申し訳ないです…。ほんと自分のペースになるんですが頑張らせていただきます! (2020年8月16日 17時) (レス) id: 7882bc78cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こたきんぐ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Kotakinnhu/
作成日時:2020年5月23日 20時