イヤホンと蝉時雨【オリジナルボカロ小説】 (ページ4)

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３　なぜ？ページ4

屋上は閉鎖されている。
だから誰も出入りしない。
そのおかげで、職員室から私がこっそり屋上の鍵を盗んだことなんて、
誰も気付かない。
部活動もなにもやっていない私は、放課後になるとたまにそこで夕暮れを見届けるのだ。

その日もそうだった。
平凡で、校則違反なんてする勇気もない私がした、
たった一つの悪戯。
私がこんなところにいるなんて、誰も知らないし、興味もないと思う。

だけど、その日は違ったんだ。

　「西園寺Aさん、いつもここで何をしてるの？」

ビクッとした。
心の底から驚いた、
どうしよう、バレた。
警察に通報されちゃうのかな
勝手に鍵盗んだりしたから。
校長先生に怒鳴られるだろうな、
みんなから、どんな目で見られるんだろう。

そんな感情が一気に押し寄せて、涙目になりながら
「すいません...」とつぶやくことしかできなかった。
声の主は誰なんだろう。振り返るのが怖い。

　「西園寺さん？私、加藤だけど」

その名前を聞いて、ハッとして振り返った。

そこには、やはり端整な顔立ちをした加藤さんがいた。

　「な、なんでここに...？」

鈴華「西園寺さんがいつもここに来ているの、見てた」