番外編：憧れた人 ページ48
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父の影響で兄はバレーボールを始めた。
若葉も兄も左利きだったが、兄の左利きは父に守られていた。
父が仕事でいない時は若葉が兄の相手をしていた。
『お兄ちゃんはなんでバレーボールしてるの？』
「楽しいからだ」
『楽しいの？』
「楽しい。若葉もしたらどうだ？」
兄が楽しいと言うなら楽しいのだろう。
不純な動機だったと思う。
バレーボールの何が兄を虜にしたのか知りたくて、自分も始めたのだから。
同じクラブに入って、兄の隣でずっと一緒に練習した。
兄が小学五年生の時、六年生の人を差し置いてレギュラーに選ばれた。
六年生の彼は凄く悔しそうな顔をしていたが、どこか諦めたような顔もしていた。
若葉はわからなかった。
大会の日、兄はそれはそれは高く飛んだ。
そして、父が守ってくれた左腕を振るい、ブロックをぶち抜いた。
『うわぁぁ！』
若葉はその姿を目に焼き付けた。
キラキラと輝いた目で兄を見つめ、上の階のギャラリーに目を向けた兄と目が合った。
兄は妹のキラキラとした目を見て、小さく笑った。
帰り道、繋いだ手がぶんぶんと揺れる。
『すごかった！お兄ちゃんのスパイク、ビュンッて！！いいなぁ、私もあんなの打ちたい！！私もスパイカーになる！！』
「セッターじゃないのか？俺に最高のトス上げるって言ってたじゃないか」
『上げるよ。だけど、私もお兄ちゃんみたいになりたい。あんな風に強くなりたい！』
普段は同い年の子たちより落ち着いている妹が、珍しくはしゃぐ様子に兄も満更でもないようだった。
自分のようになりたいと言われて喜ばない人がいるだろうか。
「なら、俺たちは二人で世界一のスパイカーになろう」
『世界一なんて夢のまた夢じゃない』
「珍しくはしゃいでたかと思ったら、もう落ち着いたんだな」
『世界一は無理。人口を考えてみてよ。だけど、スーパーエースにはなれるかもね。あいつには絶対勝てないって思わせることが一番良い。メンタルボッコボコにすれば、試合にたくさん勝てて世界一になれるかも』
その頃から若葉は冷静かつ容赦がなかった。
そんな妹の手を兄はギュッと強く握った。
「あぁ。なら、俺たちで最高のスパイカーになろう」
『たっくさん練習しなきゃだねー』
どちらかともなく走り出した。
少しオレンジがかった空の下、ふたり手をつないで夢を語り合う兄妹がそこにはいた。
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早夜(プロフ) - LUNAさん» コメントありがとうございます！！楽しんでいただけて嬉しいです。今まさに公開致しました。パスワードなしでご覧いただけます。お待たせしてしまい申し訳ありません。ぜひ、続編も楽しんで読んでいただければ幸いです！！ (2月26日 23時) (
レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
LUNA - こんばんは!!初コメ失礼します!めちゃくちゃ楽しく読ませて頂きました!!続編も気になっているのですが数話公開されたらパスワードがなくても読むことが出来ますか？続編も気になるのでよろしくお願いします!! (2月26日 23時) (レス) id: b20802aba1 (このIDを非表示/違反報告)
早夜(プロフ) - アマアマハチミツさん» コメントありがとうございます！まだ1話しか書けておらず、数話まとめての公開にしようと思っていたのですが…1話でもいいよ〜と言っていただけるのであれば公開させていただきます。 (2月26日 22時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
早夜(プロフ) - ミカサさん» 続編公開しますよ！それまでお待ちください！ (2月26日 22時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
早夜(プロフ) - いくら丸さん» コメントありがとうございます。楽しく読んでいただけて嬉しいです。続編は公開致しますので少々お待ちくださいませ。 (2月26日 22時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：早夜 | 作成日時：2023年12月12日 0時
