十四話 彼女しか知らないこと ページ16
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そわそわ。うろうろ。
歩き進んではクルリと踵を返し、また歩き進む。
「敦くーん、座れば?」
「は、はい……」
「お姉さんのこと、心配ですか?きっと大丈夫ですよ!」
ようやく椅子に身を固めて座る敦に、賢治が緩やかな口調で励ます。
そんな敦の視線は社長室へと向いていた。
一方、社長室では静まり返っていた。
お茶を啜る音が響く。
「敦の姉なんだってー、僕の助手にしたいんだけどいい?」
「……気に入ったのか」
「うん!僕と同じだから」
僕と同じ。そう云った乱歩をじっと見つめる社長の姿。
Aは何の事か判らず二人の顔を交互に見つめている。
ふと、社長と目が合った。
「施設の出だったか」
『え?__そうですけど』
急な質問に頭を少し傾げた。
出されたお茶を啜る。
社長はどこか納得したような表情で乱歩を見た。
「乱歩」
乱歩は緑の目を開いた。
「お前に一任する」
その言葉に笑った。
バッとAを振り向くと腕を掴んで
『わっ!?』
と驚くAなど気にもせず、ずんずんと扉まで進んでバンッと勢いよく扉を開く。
その音の大きさに、その場に居た人達の視線が1箇所に集まった。
「今日からAは僕の助手だ!!」
高らかに宣言する乱歩から視線を外し、連れられてきた姉にぱちぱちと目を向けた。
「てことは、姉さん大丈夫だったの!?」
『私に何か問題があるような云い方だけど』
「だ、だって、よく
そんな敦の言葉を聞き、Aの方へと視線が向く。
『だから、あっちが悪いんだって』
私は悪くない。ぼそっと呟いた。
嗚呼。こう云う奴なのか。
一斉に感じた。そして、また面倒な奴が増えた。そう思ったのであった。
むすっとした様子のAに敦はごめん!と手を中途半端に伸ばしながら近寄り、優しく両肩に手を置く。
そんな敦にふっとAは笑った。
その様子を太宰は静かに傍観していた。
敦に対するAの執着は度を越えている。何故なのか。
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早夜(プロフ) - わにゆずさん» ありがとうございます!忙しくて放置していたら、もうすぐ1ヶ月経ってしまうところでした。近々更新しようと思ってるので待っててください!! (7月2日 11時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
わにゆず(プロフ) - がんばってください! (6月13日 21時) (レス) @page21 id: b8157db853 (このIDを非表示/違反報告)
志希 - めっちゃ面白いです!!!更新待ってます!頑張ってください!! (2023年3月16日 19時) (レス) @page14 id: c4ce57e384 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:早夜 | 作成日時:2023年3月8日 17時