さぁ…みんなで…〝コロシアイ〟しましょう？ ―第一章― (ページ42)

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後悔　諏訪部大和,天音ひよ,和泉直哉,菅良祐一ページ42

「……謝罪なんか、いらないのだけれど？」

秀麗な顔立ちから発せられる悪意。化物じみた異質な気配。只ならぬ、まるで深淵の深い闇のような殺気。
喰い殺すという表現が、今の諏訪部には正しい。
“この世の者としてあってはならない存在”が、菅良には垣間見えたような気がした。

瞳孔を静かに細め、脇腹に抉るように銃口を押し付ければ鉄の重い音がする。
薄らとしか見えぬが、酷薄とした笑みは“少女”ではなく少女の皮を被った化物であった。

俺は、こんな笑みなど見たことがない。ここまで人の恐怖心を煽ってくる笑みを俺は知らない。

『本当にこの子は少女なのか』
菅良は疑問を抱いたが、既に恐怖のほうが勝っていた。
怖い、殺される。これらの文字が菅良の脳内を支配する。どれだけ物を考えても、この恐怖はとどめなく溢れ続け振り払うことなどできない。

酷い後悔を、感じた。
菅良は謝罪の言葉を紡ごうとしたのだが間髪入れずに、諏訪部は口を開く。

「この子(ひよくん)に手を出したら、許さないから」

「諏訪部に手を出すなら、俺はお前を殺す」

それは同時だった。諏訪部と和泉の瞳は本気で、彼女の酷薄とした口角とは反対に和泉は表情を描かない。
菅良の理性を、精神を、奪い取るかのようにじわじわとそれは追い詰めてくる。
息を喉奥が求める。恐怖で喉が掠れる。精神が悲鳴を上げ、助けを求めた。体が震える。

怯えが体中を血液の如く巡回して、心臓が嫌に泣き始める。ただ、謝れと脳が煩いくらいに叫んだ。
「す、ませっ…」声を絞り出す。
だが、生温い返答は彼を迎えてくれなかった。

「謝るなら、最初からしなければよかったじゃあないか。ほら、ひよくんが怯えてしまっているよ。
どうしてくれるんだい？殺されたいのか？」

菅良の、もぎ取られた言葉の端が宙に漂っていた。諏訪部の率直な問いに嫌な汗が流れる。彼女の繊細な指が、手品めいた仕草で引き金に指をかけた。撃つぞという警告の表れである鉄の重い音が響き、酷く心にのしかかった。
思わず彼は狼狽える。脂汗が滲むのを感じた。「ぃや、あ、の…そ、ういうわけじゃ……」咄嗟に否定を現す。信じてもらえる確率だなんて、俺は知らない。「……そう」興覚めした様子で諏訪部は視線を床に投げかけた。