さぁ…みんなで…〝コロシアイ〟しましょう？ ―第一章― (ページ40)

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殺気　　諏訪部大和,天音ひよ,和泉直哉,菅良祐一ページ40

彼等は歩いていた。
楽し気に話す少女と少年。その後ろを生身の人間如く歩いて後を続く男性。
少女の名を諏訪部、少年の名を天音といった。
男性はこの世ならざる者(・・・・・・・・)であり、名を和泉。

そして、彼も歩いていた。
名は菅良。酷く不真面目そうな見た目を持つ。

お互いがお互いの存在を知らぬのだが、今回の事件で互いに認知し合うのも遠い未来ではない。

だがしかし、未来を変える出来事が一つ(・・・・・・・・・・)

菅良は何を思ったのか歩く向きを変えた。
おぼつかない足取りで欠伸を噛み締めながらさも詰まらなさそうに歩く菅良とは正反対に天音と諏訪部は話に花を咲かせる。

彼等は暫く歩いた。
どこを歩いても変わらぬ景色に飽きてきたと、菅良が欠伸を零す。
菅良の腰に下げてあるにっかり青江が何かを警告するように刀身と鞘がぶつかって綺麗な音を奏でた。

「は、」

目の前を横切る人影。見開かれる菅良の瞳。彼の綺麗な桃色の瞳が捉えて離さぬのは、諏訪部の背後。

諏訪部と天音は気づかぬまま通り過ぎようとしたのだが(諏訪部は、廊下が暗くて見えなくとも気配によって菅良の存在に気づいているが)菅良は本能的に、腰に下げてあるにっかりに手を伸ばした。右手で柄を握りしめ、左手は鞘に添えてから親指で鍔をおす。さすれば数センチだけ刃が姿を現す。

そのまま、抜いて後ろの“悪霊”を叩きってしまおうと菅良は勢いに任せるがまま刀身を取りだそうとしたのだがかちゃりと音がした。
脇腹に向けられる“何か”と得体のしれぬ殺気。

「っひ」

喉の奥が鳴った。

怖かった。
気配も隠した筈だった。後ろの霊を叩きろうと刃を出そうとした刹那、己の腹に酷く冷めた目で小銃を突きつける少女が。

目許は冷たさを孕んでいて、気配を隠したというのにそれすらも見抜いてしまう少女が。
気配もなく、音もたてず何より早業だったというのに。

だがしかし、何よりも怖かったのは少女の後ろだった。

「す、ませ…っ…」

彼は、咄嗟に途方もくれぬ殺気を放つ和泉へ謝ろうとした。
無表情で、少女を守るように一歩前に立ち銃をこちらへ向けてくる。少女しか映さぬその瞳が怖い。その表情が怖い。全てが怖い。

手足が情けなくもがくがくと震えて恐怖が襲ってくる。冷や汗が滲む。喉の奥が空気を欲す。

こんなの、霊じゃあない。妖の域だ。

情けなくも、逃げ出したくなった。
鬼(・)しかいないこの空間から。