silent 【ありす様リクエスト:人魚夢主】 ページ15
砂が鳴く。
中也はそれを聞きながら海辺を歩む。
城では制限が多くていけない。
例えば煙草。
王位継承者が身体に悪いと家臣に見張られては、美味い物も不味くなる。
そんな事を考えながら一服。
城から聞こえる音楽に無視を決め込む。
今宵は宴だ。
父親が後妻を迎えた。
中也より若い女が妃になった。
彼女が子を成せば、いよいよ中也はお払い箱だろう。
子供らしさも、自由も、色恋も。
それこそ、己の感情全てを捧げた対価が此れだ。
「嫌になるぜ」
ふいに。遠い昔を思い出す。
まだ、前の妃ー中也の母が生きていた時。よく語ってくれた御伽噺。
ー海の底には楽園があるの。
ー人魚たちが暮らす国。
ー其処はとても幸せ。
「…海の底の、人魚の国…か」
『人魚の国を、知ってるの?』
何気なく呟いた言葉に返ってきた、あるはずの無い応え。
驚いて振り返った先。
暗い夜の海にー人魚がいた。
※
流華と名乗った人魚と中也は、それから毎夜、逢瀬を重ねた。
月夜。浜辺に彼女が釦を一つ置く。
其れを、中也が拾って海に投げ返す。
二人だけの合図。
『こんばんは』
水面に顔を出した彼女が笑う。
中也は浅瀬の彼女に口付ける。
二人はいつの間にか愛し合っていた。
「海の底に行きてェ」
『私は人間の世界に行きたい』
初めて逢った時に語り合った。
そして、楽園など無いのだと知ってしまった。
だから。
同じ痛みと空虚を分け合うように何度も語らった。
「いっそ、手前ェと二人きりで生きられたらな…」
『できたら、素敵ね』
小さく笑う流華に口付けをして、その日は別れた。
※
二人で生きる方法を見つけた。
流華がそう云ったのは数日後だった。
『海の魔女に、お願いすれば脚をくれるの。私は、人間になれる』
彼女の鰭が、水を跳ねた。
何処か暗い声。
中也が問い詰めて分かった。
脚の代償に彼女は声を失うのだと。
「なら、手前ェと一緒に俺の声も渡してやる」
『駄目!そんなこと、中也は何も貰えないのに!』
泣き出した彼女を抱きしめる。
「俺は、手前ェと生きる幸せの為に声を差し出す」
生きていこう、共に。
もう、言葉は要らないのだ。
無音の愛を紡いで生きていこう。
――――
リクエストを頂きました。
ありす様誠にありがとうございます!
このようなモノでよろしかったでしょうか?
可能であれば感想をお願いいたします。
2016年11月7日ちょこ
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ちょこ(プロフ) - パピルスさん» お待たせしました!先刻其の11にてアップ完了いたしましたのでご確認お願い致します。 (2017年10月29日 22時) (レス) id: 25228574eb (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - パピルスさん» お久しぶりです!!お返事遅くなり申し訳ありません!!(;´・ω・)リクエスト誠にありがとうございます!!10/27-29日頃アップにて書かせて頂きます!少々お待ちくださいませ! (2017年10月26日 0時) (レス) id: 25228574eb (このIDを非表示/違反報告)
パピルス - 記憶の雨の続編をリクエスト宜しいでしょうか。何年か過ぎて生まれ変わった2人を書いて頂きたいです!記憶は全くないけど何処か知っているような感じで惹かれ合うお話を書いて頂きたいです!お願いします(人´∀`*) (2017年10月23日 23時) (レス) id: 8aa7434c54 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 黒鶫文佳さん» お待たせいたしました!!其の7にてアップさせて頂きました!ご確認よろしくお願いいたします! (2016年12月9日 18時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - ふうかさん» お待たせいたしました!先刻其の7にてアップ完了致しましたのでご確認くださいませ! (2016年12月8日 23時) (レス) id: 2bc1ed36c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょこ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/koro0311ko1/
作成日時:2016年10月28日 21時