たからもの ページ45
中也の眼前で、鈍い銀色が揺れる。
ちりん、と金属が鳴く。それを楽しむように小さく揺らして彼女は笑った。
「手前ェ、また着けてるのか？」
『かんざし？だって此れは宝物だから』
それは昨年の夏の話。
彼女―流華と付き合って初めて、まともに逢引(デート)らしいことをした日。
腹に響く太鼓。賑やかな屋台。子供の歓声。
そう、夏祭り。
浴衣で現れた彼女に、正直見惚れた。
白い項(うなじ)が屋台から漏れる明かりを反射して、ほんのり闇に浮かぶ。
浴衣に負けじと、少し濃く塗られた紅い唇が、何か云う度に形を変える。
慣れぬ下駄にまごつく歩みでさえも、幼子のそれのようで愛らしかった。
けれど、何かが足りない。
ずっと彼女の後を付いて屋台を覗いて、ふいに思いついた。
彼女は髪を纏めているのに、髪飾りをしていなかったのだ。
「持ってねェのか？」
『え？』
振り向いた彼女。上気した頬が妙に、色っぽい。
「髪飾り」
自分の髪を指す。釣られて、己が髪に触れて流華は小さく笑った。
『マフィアの下っ端風情が、着飾るなんておかしな話でしょう？』
その、何処か哀しい横顔に胸が締め付けられる。
「おかしくなんか、ねェよ」
踵を返して歩む。先刻行き過ぎた辺りに。確か。
嗚呼、あった。小間物屋の屋台。
中也はその中から一つ、彼女に似合う物を見繕う。
「…来年は、もっといい奴くれてやる」
買ったかんざしをそっと、彼女の纏め髪に飾る。
普段は妙に大人びた彼女が、その時ばかりは子供のようにはしゃいでいた。
そして、今。
まだ流華はそのかんざしを使っている。
安物の、大人の女がするには不似合いなかんざしを。
外せと云っても『宝物だから』と聞き入れもしない。
そんな姿を愛おしいと思ってしまう。
だから…。
ちりん。また鳴ったかんざしを眺めながら中也は机の抽斗の中の桐箱を撫でる。
「今年も、祭り行くか」
去年の約束を、まだ覚えているから。
誘うと、流華は嬉しそうに、笑った。
叶わない→←真夏の太陽【アリス様リクエスト：海などでナンパされる夢主様を救う中也】
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ひよこリュナ(プロフ) - ちょこさん» hohohoほんとですか！！！ありがとうございます！！Ｂダッシュで見に行きます！！ (2016年7月17日 10時) (
レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - ひよこリュナさん» リクエストありがとうございます！読んでいただけて嬉しいです！！先刻続編にアップさせて頂きましたのでご確認よろしくお願いいたします！！ (2016年7月17日 10時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこリュナ(プロフ) - 叶わないの続きを見てみたいです！！ハッピー方面で！！ (2016年7月16日 23時) (レス) id: eef97769f4 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - アリスさん» リクエストありがとうございます！先刻アップさせていただきましたのでご確認ください ！！ ( (2016年7月11日 21時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 麗さん» 御覧頂きありがとうございます！これからも書かせて頂きますので、またのリクエストお待ちしております！ (2016年7月11日 17時) (レス) id: be59381d22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちょこ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/novel/koro0311ko1/
作成日時：2016年6月14日 21時
