malus＿1 (ページ4)

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｢人間の女の子が、ここに迷い込んできたんだ｣

『人間……』

まさか、大事な人っていうのが人間だとは思わなかった

でも女ということはあっていたようだ

まふは私の隣に座るので、私も話を聞くために体を起こした

並ぶ服の生地の出来があまりにも違くて、少々憎たらしく思う

｢その子は最初、ここから出られなくなったことに悲しんでいて、でも急に元気になったかと思ったら外の話をし始めたんだ

“ここから出れない可哀想なあなたに外の世界の話をしてあげる”って｣

『神様に向かって傲慢ね』

｢そう、かなり肝が据わった子だよ

でも僕は楽しかった。人間たちの暮らしが聞けて、1時間も1日もするりと過ぎていった｣

武家様のお家になると箱入り娘、なんて言葉があるけれど
まふも間違いなく箱入り神様なんだなと思った

そんなに外の話が楽しかったなら私もしてあげれば良かったな……っとちょっと後悔

『その人のこと好きだったんだね』

｢違うよ。大事だったんだ｣

好きという言葉が正しくないと直された
大事な人は好きな人なのではないのだろうか

神様は恋をしてはいけないのだろうか

それとも……ここに来た人間の末路を知っているからなのだろうか

だって……その女の人は私と同じようにここから出ることは出来なくて、私と同じように人間なんだとしたら

｢そんな顔しないでよ……｣

『死んじゃったんでしょ…だって、ここからは出られないから』

鼻の奥がツンっとして、目頭が熱い
私も同じ未来がまってると思うと、こんな馬鹿げた儀式が憎くて仕方がない

｢……生きてるよ、その人は今も｣

『ど、どうやって……？ここにはご飯もなくて……扉も開かない』

私が一瞬で捨て去った、生きるという道

だってどう足掻いても無理だ。
私は長くたって1週間も持たない。その間に誰かがここを開けてくれるはずがない

まさか、その大事な人の時は外から扉が偶然開いたとでもいうのだろうか

そんな、神頼みしたって無理な事情が起こりゆるというのか

｢その扉を開く事は出来ないけど、キミを外に出すことなら出来るよ｣

『そ、それを早く言いなさいよ！』

｢色々……大変なんだよ｣

気まずそうにそっぽを向くまふの頬を引っ捕まえてこっちを向かせる

真っ赤な双眼が私を捉えていて、ゆらゆらと揺れていた

｢私をここから出しなさい！｣

｢いひゃい…はにゃひて｣