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「まずー、遥のタイプはー」
「タイプは？」
坂田くんが身を乗り出して訊いてくる。
前のめりなその姿に小さく笑ってから口を開いた。
「―――好きな人がタイプになる」
「その情報役に立つん！？」
「立たないね」
なんだぁ、と気を落として態勢を戻す坂田くんを励ます。
「まあ、それなら誰だってチャンスがあるってことだから。前向きに前向きに」
なんとかそう励まして、椅子に座りなおす。
完全下校時刻までには終わらせないとな。
「……でもね、遥の好みの傾向からいって坂田くんはいい線いってると思うよ？」
「まじ！？」
「まじまじ」
またもや身を乗り出す坂田くん。
うーん、このまま行けちゃわないかなぁ。
「で、結論」
「早いな」
「ほっとけ」
がんばれ私。がんばれA。
ここに全部かかってんだぞ。
何秒かためて口を開く。
「コクれ」
「急すぎやろ！！」
坂田くん会心のツッコミに笑いながら言葉を続ける。
こちとらちゃんとした理由があるのだ。
「でもさぁ、やっぱり遥ってモテるから早めに言っておいたほうが可能性はあるよ？」
「でも……」
「でももなにもない！ さっさとコクれ！」
全く相談になってないやん。
坂田くんのボヤキは放っておいて、ごり押しする。
「だーかーら！ 坂田くんはさっさとコクればいいの！」
「強引！」
なおも渋る坂田くんに最後の言葉をいう。
これで折れてくれなかったら諦めるしかない。
「……でも、遥は自分の気持ちを押し付けたりしないから、自分のことが好きじゃないって人とは付き合わないよ？」
「……」
ようやく坂田くんが悩む素振りを見せた。
よし、ここが好機だ。
押し切っちゃえ。
「それに、遥って坂田くんの方らへんよく見てるんだよねー」
坂田くんが遥にコクってくれれば、まあるく収まるんだけどなぁ。
ちらりと横目で坂田くんを見ると、さらにうんうん考え込んでいる。
数秒間の空白があった後、ようやく坂田くんが言葉を発した。
「俺、遥に好きって言ってみようかな」
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