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「クラスの中ではいつも一人ぼっち、けど恰も意図的に趣向と思わせるような素行で気になっとった。一見傍から見たら不思議じゃないけど俺の視界の端で彷徨いてるしかなり目立っとる。色をなくしてる目の中に絶対何かを抱えて生きてるって思わせるような素振りにしか見えへん。そして何かと突き止めてみれば…吸血鬼だった、それだけの話やんか」
「…クラスの中では陽キャカーストの部類に存在する奴の趣味が質が良くない番記者並みの人間観察とか気色悪い」
「まぁまぁ落ち着けって、俺は別に興味だけで考えもなしにお前に近づいたわけやないし」
なんだ、私のことを研究所の職員のように実験のモルモットにでもするつもりなのか。そんなのを提案されるくらいなら銀の玉で死んでしまった方がマシだ。
本当は今すぐにでもこの場を離れてしまいたいくらい、逃げ出してしまいほどに身が引けるがそれをさせないかのように腰に手を回される。志麻はこちらの手をさらに引いて私の耳元に顔を近づけ薄く唇を開いた。
「＿＿俺の血、吸ってくれへん？」
その時聞こえたのは肉を割くようなガリッとした音、変わったのはいっそう濃くなった甘い血の香り。それも志麻の口の中から鉄の匂いを強く感じた。
コイツ、わざと噛んだの？
「った…けどこれでAは苦しい思いせんくても済むよ」
「ほら」と志麻は夜の逆境に在るようなパープルブルーの瞳を目と鼻の先まで近付けた。
欲しい。目の前で煽られて本能が疼いて血に対する欲望が湧き上がってくる。口にしたい、乾いた喉を潤したくて理性に傷がついていく。
「俺の血をあげる」
＿＿自制心が落ちた。
「んっ…」
自ら距離を縮め、志麻の唇に噛み付いた。口の中の血液に舌を伸ばして掬い取れば甘味が広がり今まで押えていた吸血鬼の本能を引き出していく。
もっと、足りない。
犬歯を尖らせて今度は自ら志麻の舌に突き刺した。そこからじんわりと滲む血液を零してしまわぬように舌を吸えば志麻の体が震える。
唾液と血液が絡み合ってどれが甘いのかもよく分からない。
「っほら、 もっと…」
志麻は私の後頭部に手を置いて距離を縮めるように引き寄せた。深く交じって近づいて流れ込んでくる人間の血の甘美な味。
染まってしまった、彼の血液で。
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