思わぬ仕事・二 ページ32
「……は！？」
頭の中を疑問符が飛び交う。何故？牢に入れられるような行為−−背信行為−−は、少しもしていないはずだ。だったらいったい何故……
「悪い。言葉が足りなかったな」中也さんは箸を起き手を合わせる。いつの間にか皿の上はきれいさっぱり片付けられている。
「首領の勅命だ。座敷牢にいるある異能者の相手をして欲しい。−−夢野久作、って奴だ」
「夢野……久作……」
「お前と同じ、精神操作の異能者だ」
僕と同じ−−背が伸びる。
マフィアに入り、数々の異能者を見たものだが、それだけはまだ逢っていなかった。−−異端の中の異端、精神操作の異能者には。
曰くまだ十と少しの久作少年は、非常な異能を持ちながらも、あまりに見境がないせいで、あの男に−−太宰治に封印されたのだという。
「あの男に−−」それは僕のやる気に火をつけるには十分な情報だった。
あの策謀の権化は、たった数分の邂逅の中でも僕の中に傷を残した。その傷を消すには、奴を出し抜くことが不可欠なのだ。
−−こうして考えてしまうこと自体、奴の術中に嵌まっていると云えるけれど。
「如何なされた、A殿」
と、いう訳で、僕は今マフィア本部に向かっている。なんと『黒蜥蜴』の護送付きで。
黒塗りの高級車−−その中に、運転する樋口さんと芥川くんと僕。街の人たちはこの車を少しずつ避けて行って、それがちょっとだけ気持ち良い。
「何でもない、ちょっと考え事をね」足を組み変える。少しでもマフィアらしく、緊張を悟られないように。「二人は『Ｑ』がどんな子か知ってる？」
「Ｑ−−ですか」バックミラー越しに樋口さんは眉を寄せる。「危険な異能ですよ。見境なく周りを傷つける」
「樋口、今から不安にさせるな。A殿は緊張しておられる。−−混沌が服を着て歩いているような奴です。他人を玩具としか見ていませぬ」
「芥川くん、それ気遣いが不発に終わってるよ……」
余計怖くなってきてしまった。芥川くんが樋口さんより怖いことを云ったせいで。
車を下り、立派なビルの地下に−−きらびやかな外観とは裏腹に、殺風景な木組みの牢が並んでいる。
僕は頬を軽く叩いた。幾ら怖くても、これは仕事だ。中也さんが僕を信じ与えてくれた−−。その期待を裏切る訳にはいかない。
そこまでしたところで−−僕は気づいた。
どこからともなく、歌が聞こえる−−その歌詞は紛れもなく、僕の歌であることに。
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こんぺいとうくん(プロフ) - コミュ障の極みさん» ありがとうございます〜！！頑張ります！DA、中也さん格好良過ぎでした… (2018年3月16日 21時) (
レス) id: 89d22ed41a (このIDを非表示/違反報告)
コミュ障の極み - デッドアップル観れなかったァァ！あと面白いです！更新ファイトです！ (2018年3月15日 18時) (レス) id: 0c405ae39e (このIDを非表示/違反報告)
こんぺいとうくん(プロフ) - 真昼さん» あ、あ、ありがとうございます…！（コミュ障）すごい嬉しいです…頑張ります！！ (2018年3月10日 15時) (レス) id: 89d22ed41a (このIDを非表示/違反報告)
真昼 - すごい面白いです、頑張ってください！ (2018年3月9日 23時) (レス) id: 85666cc382 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こんぺいとうくん | 作成日時：2018年1月29日 17時
