弐十五 ページ25
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Aがここに戻ってくる話を聞いた。
まだ先の話ではあるが、同僚達は嬉しそうに話を弾ませていて。
土方も心の内では嬉しいと思いつつも、何となく本心から喜べずにいた。
『今度そっちに戻れるようになりました。またよろしくお願いします』
電話越しに聞こえた彼女の言葉は、どこか不自然で上の空のような気がしたからだ。
異動が決まる前まで、Aは早く戻りたいと何度も言っていた。
それは上司に恵まれないせいもあるが、やはり彼女自身がこの一番隊で居ることが天職だと考えていたからだろうか。
そんな彼女の異動が決まったとなれば、すぐに土方に連絡を寄越してわあわあと騒ぎ立てただろう。
また土方達と仕事ができて嬉しい、そう言うのが想像ついて、実際の反応に違和感が残っていた。
そして、さらに気になる反応を示した人物が一人。
「A帰ってくるんですね。よかったよかった」
彼女の相棒ともいえる千影だ。
Aよりも感情的な彼女にしてもあまりに冷静な素振りだった。
もし、土方よりも先に話を聞いていたのならば、千影が走って土方に教えてくれたに違いない。
(この違和感は勝手な想像か?)
そうぐるぐると考えながら食事をしていると、奇妙な話が耳に入る。
「なあ、聞いたか。Aに縁談の話が来てるって」
「まじかよ。それ副長知ってん」
「おい。どういうことだ。話せ」
思わず話をしていた隊士の胸倉を掴む。
ぶるぶると彼を揺さぶるが、戸惑ったような表情をしたまま話そうか迷っている。
そんな時だ。
「待て!」
目の端で目を丸くした千影が慌てて走って逃げていくのを捕らえる。
食事を放り出し、彼女の跡を追う。
そして、その行く手をすぐに塞がれた。
「トシ。話がある」
真剣な眼差しの近藤が土方を制す。
そして、そのまま彼の部屋へと通される。
そこには面倒臭そうに座る沖田の姿。
さらに、その隣に捕まえてこられたのであろう千影の姿。
唇を噛みしめながら大人しく座っている。
「…さて。
千影」
腰を下ろした近藤に名前を呼ばれ、彼女の肩は震える。
「この前の外出…一人で買い物に行ったと言ったが、
実はそこにAが居たんじゃないのか。
Aはここを離れたとはいえ、家族のような存在と俺は思ってる。
俺達、親兄弟…恋人に内緒で、縁談なんておかしな話だよな」
なあ、と間延びした声で話しかけられ、千影はさらに困惑した顔を見せた。
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Nattu(プロフ) - amefurasi750さん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです;;銀魂のキャラはどの子も魅力的なので自分もそれをあまり崩したくない意識で書いていました^^どストライクとのお言葉嬉しすぎます;;本当にありがとうございました! (2022年12月13日 0時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
amefurasi750(プロフ) - ありがとうございました!すごく心に残る話で、土方さんや沖田君たちの性格がそのままで安心して読むことができました!尚且つ土方さんと主人公ちゃんとのイチャイチャ具合がドストライクでした! (2022年12月8日 8時) (レス) @page32 id: 0bed4b2b02 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2022年9月1日 23時