【マギ】白銀の炎帝妃外伝 (ページ5)

今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:5,110 hit

Ⅰ-⑤ 秘密ページ5

「ゴホン……変な言い方をしてすまない。俺が言ったのは、君が滞在する間はこの国の客人としてこの王宮にいてほしいということだ」

笑顔で話すシンドバッド

だが、発せられた言葉が一瞬理解できなかった

『私が…客人？それは、少しいかがなものかと…、どこの誰かも分からない放浪者を客人とするなど無防備ではないでしょうか』

怪訝な顔でAが答えると、シンドバッドは苦笑する

「そこまでシンドリアは落ちぶれてはいないよ。君がどんな存在で何をしようと、俺たちは君一人消す力は持っている」

『……』

Aは顔を伏せる

シンドリアは新興国だが、7つの金属器を持つシンドバッドを始めとした八人将のおかげで強い国として認識されている

女一人くらい消すのは他愛もないことなのだ

「それに君は踊り子なのだろう？ぜひ、この国の祭りで披露してもらいたいな」

『…それは光栄にございます』

頭を下げると、シンドバッドが笑顔になる気配がする

「よろしく頼むよ」

ーーーーーーーーーーーー

『………慣れん』

テラスから外を眺め、ため息を吐く

今日は王宮に泊まるといい、と言ってくれたシンドバッドには悪いが、全く慣れない

禁城で働いていた頃は城下に住んでいたので、このような豪華な宮殿で普通に一夜を過ごすことは新鮮すぎる

(普通じゃない一夜は過ごしたけどね…)

思い出して苦笑する

まさか紅炎とあの日を迎えることになるとは思わなかった

彼を殺すことはできないと分かっていたので、良くて逃げ出せるか悪くて殺されるかの二択だと思っていたのに

覚悟していたのに

(元気にしてるかな…)

この旅の中で組織が追ってくることはあっても煌帝国が追ってくることはなかった

全て紅炎の指示だろう

ありがたいことだ

「何か考えことかな？」

ふと声が聞こえた方に顔を向けると、シンドバッドが立っていた

ここは客室じゃないのか、と疑問に思ったが王だからどこに行ってもいいのだろう

全くはた迷惑な話である

『なかなか宮殿で一夜を過ごすことなどないので、少し慣れなかったのです。それにもう一つ考え事をしていました…』

「へぇ、考え事とは…？」

『秘密です』

唇に指を当てて微笑む

王に向かって不敬かな、と思いながらも暗殺者時代に磨いた笑顔を崩さない

少し頬を染める目の前の人とこれからどういう関係になっていくのだろうか