【マギ】白銀の暗殺者 Ⅱ (ページ42)

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１０．白蓮ノ提案ページ42

「久しいな。元気にしていたか？」

『はい！街の皆も父も母も、もちろん私も元気です！』

白雄の質問に笑顔で答えるA

そこでふと皇帝やこの２人の皇太子がAの街に行っているということを思い出した

「そうかそうか。街の者たちも真夜も翠泉も元気か」

白雄も微笑む

“真夜”“翠泉”とはAの両親の名だろうか

Aについてまだまだ知らないことが多い

それがたまらなく悔しかった

「最近は菱陽に行ってないですね。今度の遠征で寄りませんか？兄上」

「白蓮。菱陽には観光で行ってるわけでは…」

「紅炎も行ってみたいだろ？」

「え、あ、はい！」

「ほら兄上。紅炎もそう言ってますし、どっちにしろ方向は菱陽に近いですよ！」

「…分かった。父上に頼んでみよう」

白蓮の強引な提案であるものの、紅炎は嬉しかった

Aの話でしか聞いたことがない菱陽の街を、Aが育った街を見ることができるからだ

「お？紅炎嬉しそうだな」

「…Aから話しか聞いてこなかったので、実際に行くとなると嬉しくて」

「そうかそうか！…それにしても紅炎、いつAを妃にするんだ？」

「！！」

「こら白蓮。紅炎をいじめるのはやめなさい」

さすがに…といった表情で白雄が白蓮の肩をつかむ

紅炎自身もそこには触れないでほしかった

『皆様、来てくださるのですか！？』

「ああ。今度の遠征で…と考えている。父上に相談しなければならないがな」

Aは嬉しそうに顔をほころばせる

どうやら先ほどの話は聞こえていなかったようだ

紅炎は静かに安堵した

紅炎の部屋でしばらく話をしていると、ふいに扉が叩かれた

「白雄、白蓮？いますか？」

美しく艶のある声

白雄が扉を開けると、そこには白徳帝の妻、そして両皇太子の母、皇后の玉艶が立っていた

その腕にはまだ小さい白龍が眠っている

「どうされたのですか？母上」

「忙しいところ悪いのだけれど、白龍と白瑛をちょっと見ていてくれないかしら」

「構いませんが、どちらかに行かれるのですか？」

「うふふ。ちょっとそこまでよ。さあA、行きましょうか」

『！…はい。皇后陛下』

玉艶はAを呼んだ

それに答えたAの声には今までのような無邪気さがなく

不安が混ざっているようだった

Aは紅炎の横を通り、白雄と白蓮の間を通り、玉艶の隣についた

そして振り向かず、紅炎の前から歩き去った