９．第一皇子ト第二皇子 ページ41
『それに、私の夢は紅炎様の隣で剣を振るうことです！平民でも…そのくらいなってもいいじゃないですか！』
顔を上げ、笑顔で話すA
『私は…紅炎様の部下になります。それ以上は何も望みません！』
希望を含んだ眼差し
彼女は本気だ
(まさか…俺がフラれるとはな…)
笑いがこみ上げてくる
この少女を攻略するにはまだ時間がかかりそうだ
「フッ…天然なのか、知らぬふりをしているのかは分からないが、お前は本気なのだな」
『…もちろんです！だから早く手合わせの続きをしてください！』
自分より少し軽い模擬刀を紅炎に向けてAは言う
(俺は、こんな時代でもそうやって笑顔で未来を話すお前が好きだよ…)
届かぬ想いを胸にしまい
目を閉じ、ゆっくりと息を吐く
「さあ、続きだ！」
『はい！』
―――――――――
――――――
――――
『もう少し…だったのに……』
「俺より力がないお前が悪い。だが、スピードは断然お前の方が上だ」
『む……今褒められても喜びませんよ』
「褒めたつもりはないぞ」
『……』
ぷいと顔を反対に向けた
この反応に紅炎は微笑む
(どんなに大人みたいな振る舞いをしていても、所詮は俺より年下のガキだな。まあ…そんなところも可愛いが…)
「おーい、紅炎！」
「こら白蓮。お前は声大きい。もう少し抑えろ」
「白雄殿下！白蓮殿下！」
絶妙なタイミングで従兄がやってきた
自分が尊敬するこの国の第一皇子と第二皇子だ
紅炎は両手を顔の前で組み、ひざまずく
「このようなところまで、どうされたのですか？」
「いや、遠征の用意ができているか確認しに来たのだ。それではだめか？」
「いえ、わざわざお越しいただきありがとうございます！」
白雄は微笑み、立つように促す
紅炎はそれに従う
「後ろの娘も立っていいぞ」
白雄の言葉を聞いて紅炎は後ろを向いた
そこには綺麗な姿勢でひざまずくAの姿があった
『失礼いたします』
顔を上げ、その場で立つA
その眼はしっかりと白雄と白蓮に向けられていた
「ああ！Aじゃねぇか〜！」
『お久しぶりです！白蓮殿下』
いつも通り無邪気な笑顔で答える
白蓮はうんうんと頷きながら、紅炎に聞こえるように小さく言った
「紅炎。いい妃見つけたな！」
「……」
この第二皇子はどこまで知っているのだろうか――
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作者名：悠葉 | 作成日時：2018年3月7日 0時
