５１．色恋 ページ5
“紅炎さま！紅炎さま！あれはなにー？”
“全く…そう騒ぐな、――！”
“えー！教えてくださいよー”
幼い少女は自分の名前を呼び
自分に問いかけ
華やかに笑う
この少女の名前は何だっただろうか…
“紅炎さま！いつ私の街に来てくれますか！？”
“次はいつだろうな。お前の街、――に行くのは”
この少女の故郷は何といっただろうか…
自分は今、何を見ているのだろうか
すると突然目の前が真っ白い光に包まれた
やがてその光が消え、場面が変わる
薄い暗闇の中、先ほどの少女が少し大きくなった姿で現れる
“私はずっと…あなたのことが…”
少女が目を潤ませながら言うが
言葉に詰まったようで何も言わなくなる
次の瞬間
少女の目が鋭く光った
紅く、鋭く光る眼を自分に向けてくる
“―私はあなた方に殺された。私は…私ではなくなった。あなたの知る私はもういない。今あなたの前にいる女は私かもしれない……でもそれは昔の私。愛を覚えていた哀れな私だ…”
意味深な言葉を残して少女は暗闇の中へ消えていく
その手をつかもうとするが届かない
自分はその少女を愛していた
だが、消えてしまった
白銀の髪に紫の瞳
そう現在の自分の側近によく似ている少女に
自分は恋をしていた
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――――――――
―――――
「…ハァ」
寝台に横たわっていた紅炎はため息を漏らして目を覚ます
いつの間にか眠ってしまっていたようだ
しかも夢を見た
しばらく横たわったまま考える
あれは自分の記憶だ
だが、少女の眼が鋭く光ったところから記憶ではない
少女の幻影だ
(今更だな…)
紅炎はフッと笑う
今自分はどんな顔をしているのだろうか
今更昔の色恋など思い出しても仕方がない
ただ、無性に少女に似ているあの側近に会いたくなった
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作者名：悠葉 | 作成日時：2018年3月7日 0時
