【マギ】白銀の暗殺者 Ⅱ (ページ28)

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７４．幸運ページ28

蒼―Aは目を覚ました

そして今自分が置かれている状況を把握する

(ついに…かぁ～)

まさか抱かれるなんて思わなかった

だが、それを自分は受け入れてしまった

今の自分の体勢は紅炎に抱きしめられ、横になっている

抜け出したいのだが身動きが取れない

なんて力が強いのだろう

(今回が初めてだったら…すごく恥ずかしかったんだろうな～)

他人事のように思う

今回が初めてではないのは事実だ

紅炎も分かっただろう

処女はもう何年も前に失くしているのだ

Aは紅炎の腕から抜け出そうと動いたとき

腕がそれに反応して動き、またきつく抱きしめられてしまった

『起きているなら緩めてくれませんかね？紅炎様』

「嫌だ」

なんとも子供っぽい言い方に少しときめいてしまった

A、一生の不覚である

『他の女性がいるじゃないですか。今回だっていつもの夜伽と同じでしょう？』

「馬鹿が。愛する女にそんなことするわけがないだろう」

『恥ずかしいこと言ってくれますね…』

紅炎の腕にまた力が入る

(そろそろきついんだけどな…)

ため息をついて紅炎の顔を見る

『分かりました。少し失礼しますよ…』

Aは紅炎の顔に自分の顔を近づけ、口付けた

それに少し驚いた紅炎は思わず腕の力を緩める

その隙に抜け出すことに成功した

『はい緩めたー。私の勝ちー』

「チッ…油断した」

相手が悔しそうな顔をする

そんな表情にもときめいてしまうなんて重症だなとAは思う

そんなことを思いながら床に落ちている服に着替える

そして廊下に立てかけていた刀を取りに行く

幸運なことに紅炎の部屋の周りには一兵もいなかった

夜伽の際は気まずくなるだろうから兵をどかしているのかもしれない

なんともいらぬご配慮である

『もうそろそろ夜更けです。私はこの国を出ます。本当に殺さなくてよかったのですか？今ならまだ間に合いますよ？』

「何度も言わせるな。殺すなら次だ」

『まあ怖い』

悔しそうに顔を歪める紅炎を自分は見たことがない

自分にだけ見せてくれる顔なのかもしれない

(本当に贅沢ですよね…)

Aは紅炎に気づかれないように笑う

自分を変えてくれた、自分が惚れた人が

自分に対してこんな感情を持ってくれていたなんて

なんて幸せなのだろう