【マギ】白銀の暗殺者 Ⅱ (ページ21)

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６７．偽造ページ21

蒼夜の雰囲気が変わった

誰も寄せ付けないような鋭さを持ち

今までのような無邪気さもなく、おとなしくなった

紅炎は蒼夜を部下に調べさせていた

信頼はしているが、まだ不十分だからだ

「アシュタロス…」

紅炎が「ジン」の名前を呼ぶと

剣の八芳星が光った

「お前は蒼夜を眷族にした。それはあいつが俺たちの味方ということだな？」

八芳星がさらに光る

「もしあいつが敵でも、俺たちを殺さないか？」

八芳星は光り続けたままだった

これは肯定を表しているのだろう

ならば、これを聞いてもよいのだ

「蒼夜は月華なのか？」

すると、八芳星の光が点滅する

言うことはできないと言っているのだろうか

「ふっ……自分で確かめろ。か」

様子を見ている限り

蒼夜が月華という線は濃くなってきた

やがて確定するかもしれない

「総督閣下」

「何だ」

書館の中に一人の文官が入ってきた

機密情報担当の若い者だった

「例の女性のことで…」

「言ってみろ。ここには俺しかおらん」

文官は目を閉じた

「彼女の戸籍が偽造されていることが分かりました」

「どういうことだ」

「彼女と同じ容姿、経歴の同い年の女性に“蒼夜”という名はありませんでした」

「つまり、この国には“蒼夜”という女は存在しないのだな？」

「はい」

予想はしていた

あの女は、“蒼夜”は、この国に存在しなかった

作られた存在だった

「それに加え、容姿の面について該当する女性を見つけました」

紅炎は眉を上げた

そして文官に続きを話すよう促す

「煌国時代、一番栄えていたといわれる商人の街“菱陽”出身のA。７年前に内乱に巻き込まれ、死亡しています」

「！」

(そうか…お前はあの時、俺の前に現れたAだったのだな)

夢の中の少女と現実が結びついた

やはり、蒼夜とAは同一人物だった

この国に裏切られた彼女の痛みはどれほどのものだっただろう

何も知らない

知ろうともしなかった自分をひどく恥じた