【マギ】白銀の暗殺者 Ⅱ (ページ20)

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６６．限界ページ20

――蒼と玉艶が対面した数週間後

目の前にある書物“実験体記録”を閉じる

全てを知った蒼はもう、この禁城にいることはできないと悟った

そしてもう限界だった

今まで忘れていた国への憎悪が再び高まっている

主に紅徳、玉艶やその周りにいる組織に対して

(もう皇族全員を殺そうだなんて思わない…)

この半年ほどででこの国の頂点に立つ一族は皆が皆悪者ではないと分かった

紅炎のように先帝や２人の皇太子の志を継いでいる者もいる

そのようなものたちに国を任せたい

心から願う

幼いころ恋をした相手には幸せになってほしいと思う

今も愛していた相手にはこの国を導いて欲しいと願う

(だから私は、真実を知った私は、あなたを殺す…)

家族を、友人を、帰るべき街を壊したこの国を絶対に許さない

けれど、この国はまだ救いがある

自分を変えてくれた大切な存在がいる

あの日から何もかも失い、愛さえも忘れてしまったこの暗殺者に

愛を思い出させてくれたあなたを――

私はこれから殺す

『ねぇ…眷属』

≪なんだ？≫

『あなたの主はこれを確信していたのね』

≪そうだ。だからアシュタロス様はお前を眷属にしたのだ。A≫

『今から私がすること…止めないでよね』

≪止めるものか。お前は自分を信じればいい。アシュタロス様も我らもお前を信じている≫

『あっはは。何に対してなのかしら？』

『眷属。私は絶対に止めてみせる。この国は生き残らなければならない』

≪ああ≫

『あの人が……我が主が望んだことを叶えさせてあげなければ、私は死ねない。死にたくない』

≪…≫

『叶えた結果、私が死んでも構わない。私は生きていてはならない存在になるから』

≪お前は偉いな≫

『そりゃどうも』

≪さあ、そろそろ夜が来るぞ。お前が一番動く刻ではないか≫

『よく分かってるじゃない。さて、この国を揺るがしてやろうじゃないの』

――月華の蒼として

――煌帝国第一皇子の眷属蒼夜として

――失われた街“菱陽”の生き残り Aとして