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６５．重症 ページ19
『ただいま戻りました。早速ですが紅炎様、書館の資料を貸していただけないでしょうか？』
「急だな。帰ってきての第一声がそれか」
『だから、早速ですがと言ったではありませんか』
蒼夜の体は濡れていた
服に少し泥がついている
紅炎はため息をつき、蒼夜に着替えるように促すと
蒼夜は不満そうな顔で自室へと戻って行った
「そういうところだ…大馬鹿者めが」
ちなみに紅炎の顔は薄紅に染まっている
“恋”とは厄介なものだ
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「何の資料が欲しいんだ？」
『…この国は地下の化学施設でさまざまな実験をしていますよね？その実験結果の資料も把握しておこうかと思いまして…』
「地下は紅明の管轄だ。紅明にも話は…」
『もちろん。通していただきました』
準備が早い
こういう存在は紅炎にとっても助かる存在なのだが…
ふと蒼夜の横顔を見ると
何かに怯えているようだった
それを隠すように静かな鋭い殺気をはらんでいる
どんな手練れでも見逃してしまうくらいの…
「何に怯えている」
『！……いえ。なんでもありませんよ』
蒼夜はこちらを向いて微笑んだ
いつものように
その顔を見て安心してしまうのは、重症だろうか
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作者名：悠葉 | 作成日時：2018年3月7日 0時
