【マギ】白銀の暗殺者 Ⅱ (ページ15)

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６１．絶望ページ15

今日は雨が降っている

蒼は午前の仕事の後休みをもらい、とある場所へと来ていた

とある場所とは――故郷“菱陽”があった場所である

蒼は街の様子を眺めた

焼けてしまったはずの地面には植物が生えている

崩れた建物はそのままだ

自分の心と体がさらに冷えていくのを感じる

なぜこんなところに来ているか…

それは――この国に絶望したから

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『煌帝国戦記』に自分の街が記されていた

しかしそれは、全く思いもよらないことが書かれていたのだ

“煌帝国北部に位置する菱陽にて反乱が起きたため、罪人となった街人をその場で処刑した”

頭の中が真っ白になった

ここに書かれていることは事実ではないと一瞬で分かったからだ

それはなぜか…

菱陽は反乱など起こしていないからである

白徳大帝や２人の皇太子が亡くなったことは菱陽で大きなニュースとなった

だが、街人は玉艶や組織が流した情報を鵜呑みにしていたので

誰も玉艶や紅徳に対して恨みは持っていなかった

それなのに、皇太子が亡くなった次の日

わけも分からず菱陽は滅ぼされてしまった

「なぜだ」と問い、嘆き悲しみながら死んでいった民は

国の手によって偽造されていたのだ

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Aは笑った

狂ったように笑った

国とは、皇族とは、所詮そのようなものだったのだ

自分の都合のいいように民を作り替え、全てを作り替えるこの国に

絶望した

『ここで一緒に殺してくれれば…よかったのに…』

月華のやり方も気にくわない

国のやり方にも気にくわない

ならば自分はこれからどうすればよいのだろうか

なぜ…平和にならない

国内でもこんなに割れているのに

世界を一つになどできるのだろうか

自分の主は、練紅炎は、自分たちのことなど――

“俺は月華が欲しい”

『！！』

(ああ…そうか。あの人は本気だった。月華が欲しいと心から思っている……)

絶望したはずなのに

自分はそう言ってくれた主を――

愛していた

徐々に記憶が戻ってくる

自分の過去をもうすぐ取り戻せる

自分の左目から一筋の涙がこぼれる

もう二度と涙が出ることのない右目の分まで

『ああああああああああああああああああああああああ！！！』

Aは壊れた街の前でひたすら叫び、泣いた