彼との夜。(本編その後のようなもの) ページ40
肌を刺すような空気のつめたさに少し身震いした。外は雨が降っていて、傘を持つ手が
太宰さんのおかげでポートマフィアに所属させて頂けることになった私は、一回目の給金が入るまでの間彼の家に居候していた。
とても良い待遇で、ありがたい。ただ一つ不平を零させてほしい。
…夜の行為が激しすぎる。
年頃の男女が一つ屋根の下、しかも出会いがあんな感じだったので仕方がないとは思う。
住まわせてもらっている身なのであまり文句は言えないし、恋人という関係にあるのだから当たり前のことだと分かってはいる。
私だっていい思いをしているし、嫌なわけではないが、せめて翌日が休みの日にして欲しいのだ。
と、見えてきた彼の家。中に入って彼と顔を合わせたら、夜のことを訴えてみよう。
心に決めて玄関の戸を引いた。
「ただいま戻りました〜」
「あァ、おかえり。」
相も変わらずお綺麗な微笑で出迎えてくれた彼の顔を見つめ、意を決したように息を吸う。
「あの!お願いがあるんです。」
「なんだい?」
「…そ、の。夜、するの、休みの前の日だけに、してほしいです。」
尻すぼみな私の発言に、彼は少し沈黙を作った。そして一言、
「…私とするの、いや?」
あざとく首を傾げ、計算され尽くした角度で尋ねてきた。そんな風に問われて嫌と言える私ではないし、そもそも嫌なわけではないので、
「いやとかじゃなくて!太宰さんとするの、気持ちいいし好きなんですけど、次の日が仕事だと眠くなってしまうので…」
また語尾が小さくなる私の言葉に、ふむ、と頷いたその人は、こちらへの距離を詰めながら口を開く。
「じゃァ、今夜はいいよね?君、明日休みでしょ。」
「え、なんで知ってるんですか、」
「そりゃもちろん、君の事だもの。」
言いながら、いつの間にか私を壁に追い詰めてしまう。耳元にとん、と手をついた美麗な立ち姿に見惚れていると、顔に影がさした。
ちゅ、と聞こえたリップ音。
___ね、いいでしょ?
わざとらしい甘えるような声色に、気がつけば首肯していた。
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作者名:こめこ | 作成日時:2018年4月28日 22時