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「っあ、これは、その…」


最悪だ、まさか、太宰さんに見られるなんて。一番避けたかった。


「何をしているんだい?セクハラかな?」


「こ、これはそんなんじゃ、えっと、実は恋人関係で、」


そんな焦った男の言い訳に、ふぅん、と目を細めた彼はポケットから何かを取り出した。

スマートフォンだった。それをこちらに向けて、カシャ、と。


「おい、勝手に撮らないでくれ!」


「どうして?恋人なんだろう?それなら何も困らないよね、カップルが仲睦まじくしていた所で世間は何も咎めないよ。」


それとも、何か、困るような嘘でもついてるのかな。と、分かっているだろうに問い詰めるこの人は、少し怖い。


「ねえ、そこの君。」


「わ、私ですか?」


「そうとも。君達、本当に恋人なの?」


「い、いいえ!断じて違います。」


彼は満足そうに頷くと、こちらに歩み寄ってきた。


「じゃあ、おじさん、これはセクハラだよね?」


「さっきの、動画撮っちゃったから、拡散されたくなかったら今すぐ帰ってくれるかい?」


にこり、と笑みを深める太宰さんに、男の人はバツが悪そうな顔をすると、また連絡するからね!と言い残してどこかへ行ってしまった。


男の姿が見えなくなるのと同時に私もスマートフォンを取りだして、ブロックした。


それにしても、勘違いもいいとこだ。気持ち悪い。


「あの、ありがとうございます。」


「ああ、気にしないで。…それより、」


「もうお金、無くなっちゃった?他の男と寝るくらいなら、私に連絡して欲しいのだけど。」


「…あ、の、まだ残ってて、全部。え、と」



どうしよう、使いたく無かった、なんて。自分でも理解出来ていない感情を説明するなんて無理だ。

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作者名:こめこ | 作成日時:2018年4月28日 22時

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